春 17 ページ18
『やっぱり……貴方が城主だったのですね』
「あれ、気づいてたんだ?」
うすら笑いを浮かべ、上座に座るのはシオドキ城城主兼シオドキ城忍者隊組頭。
「俺の名前は、潮刻正隆(しおどきまさたか)。
気づかれたんならしょうがない。さて、どうしようか」
『私の名はAです』
『……箱は回収済みです。あとは巻物だけ。…大丈夫、私なら出来る』
Aはそう呟き、胸を撫で下ろした。
屋根の上から見守るは組たち。
『…さて、私は忍務は必ずこなす人です。…本気で行きますよ』
Aはどこからか、薙刀を取り出し、構えた。
「俺も本気だそっと」
潮刻正隆は自身の刀を構え、Aを見据えた。
『参る!』
Aは潮刻正隆へ一直線に走った。
『…私だって無知じゃ無いんですよ。刀の弱点くらい、知ってます』
ボソッと呟いた言葉は相手に届いただろうか。
「Aちゃんはどうして俺の求婚を断ったの?」
屋根の上の気配が揺らいだ。
どうやらこの城主はとても唐突に物事を進めてしまう、学園長先生タイプらしい。
『…何故って…、私には婚約者が居るって言ったじゃ無いですか』
「…本当に好きなの?」
『もちろんですよ。大好きだから、あの人のいる場所へ帰りたいから今こうしているのですよ。
…私が愛せるのはあの方だけなのです。だから、お殿様と結婚は出来ません』
「………、降参」
『…へ』
「Aちゃん、そんなに好きなら早く帰らなきゃね。…上に居るのは婚約者か?」
『…流石です。気づいたらしたんですね。そうですよ、私の最愛の婚約者です』
すると、屋根の上に隠れていた全員がAを囲むようにして立った。
「そうそう、俺の後ろにいる萌黄ちゃん?巻物はねぇ、もう学園に戻したさ。いくら探しても無いはずだよ」
「えっ、私のことも!?」
『萌黄さん、彼は忍び組頭ですよ』
「次は負けないんだから……」
萌黄は悔しそうに呟いた。
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作者名:星波きらら | 作成日時:2020年10月8日 23時