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自炊は人並みにする方である。

だけど、誰かの為に料理を作った事なんてない。

まぁ、まずは何か食べて落ち着いてから話を聞こうと思い、キッチンに立つ。

これでいいのか、と不安しかないお粥を彼女の元へ持っていった。

「……食べられそう?」

「……はい」

「そっか…良かった」

熱いから気をつけてね、と彼女にお皿を手渡す。

大切そうにお皿を持ったまま、動かない彼女を不審に思い声をかけた。

「……やっぱ、しんどい?」

彼女は小さく頷いた。

「………ごめんなさい…」

「いや、いいのいいの」

今までほとんど何も口にしてこなかった彼女の胃は、お粥であっても受け付けようとしないのだろう。

でも困った。

身体の不調を治すには、何か食べることが1番だ。

「………あのさ、それちょっと熱いから、冷ましたら少しでも食べれるかな…」

彼女からお皿を渡してもらい、少しスプーンによそう。

こんなシーン、何かで見たなぁと思いながら、フーフーと湯気の出るお粥を冷ました。

彼女はとろん、としたしんどそうな目でずっと俺の事を見ていた。

「はい、これで熱くないと思う」

差し出したお粥を、彼女はゆっくりと口に入れる。

「ん………」

ポロポロとまた涙を零す彼女に慌てる。

「不味かった?ごめん…」

彼女は慌てて首を横に振った。

「おいしい………私…こんな優しいご飯……初めて食べました…」

「…そっか」

不味かった訳ではないと知り、胸を撫で下ろす。

それと同時に、何だか嬉しくなった。

彼女は俺の腕をきゅっと掴む。

何事かと彼女の顔を見ると、病人特有のうるうるした瞳が上目遣いに俺を見ていた。

「……もっと…ください…」

どくん、と心臓が跳ねる。

こいつ…それわざとか?

いや、絶対そんな事は無い。

「……うん」

今まで何事もポーカーフェイスで完璧にやり過ごしてきたのに、彼女といる時の俺は圧倒的に使い物にならなくなっていた。

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作品ジャンル:タレント
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作者名:hoshina
作成日時:2023年5月6日 23時

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