今際の際 (ページ4)

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心の休まらない時間だった。

彼女は目を覚まさないし、少し目を開けても視点が合わない。

うわ言のように「ごめんなさい」と小さく呟き続ける姿には、いたたまれなくなり胸が締め付けられるようだった。

汗をかいてしっとりと濡れた前髪を撫で、慌てて近くのコンビニで買ってきた冷えピタを額に貼る。

「んっ…」と彼女は小さく声をもらしたものの、反応はそれだけ。

これで合っているのだろうか。

身体を拭いた方がいいのだろうか。

でも、相手は女。

身体の拭き方もわからなければ、彼女に何やら特別な感情を向けている俺が、無心で身体を拭ける訳もない。

そんな自分が嫌になりながら、ベッド脇で頭を抱えるしかなかった。

泣きそうになった。

どうすりゃいいんだ。

彼女がここに戻ってきた理由も、こんなに窶れてしまった理由も、何もかももわからないままなのに。

度々、彼女が呟く。

ネスさん、と。

その度に心臓を跳ねさせ、「ん？」と返事をしてみるけれど、彼女からの返事は無い。

辛い、苦しいを乗り越える為のおまじないのように、俺の名前を呼んでくれているのだと信じて。