・ ページ19
俺はさ、Aの事が好きで好きで仕方がなくて。
守りたくて、譲れなくて、1度はさよならをしようとしたんだけど、忘れられなくて。
俺は変なところで口下手で、不器用で、好きも何も言葉にする事が出来なかったね。
本当は、ずっと言いたかったんだよ。
「……愛してる、ずっと」
これはきっと、俺への罰。
今まで数多くの人々の人生を狂わせて、それについては何も思わないで、のうのうと生きてきた俺への罰なのだ。
『………』
やっぱり天使の彼女は何も言わないで微笑むだけだった。
ふっ…と彼女が空を見る。
嗚呼、いなくなると思った。
あの日みたいにベランダに足を向ける。
両手を伸ばして、飛び立つ彼女の腕を掴んだ。
……掴んだんだ、確かに。
瞬きの間に彼女の姿は消えて、俺の手から1枚の真っ白な羽が静かに落ちた。
「……あはは…」
俺は安堵の笑いを零す。
同時に涙が溢れ出た。
居たんだ、本当に。
夢じゃなかった。
彼女はここに来てくれたんだ。
何度も何度も、その純粋無垢で真っ白な羽をつけて。
そう思った瞬間、この世界の全てが何だかどうでも良くなった。
勢いをつけてベランダの柵を飛び越える。
きっと俺は天国には行けないだろう。
いっそ彼女と一緒に天国を一目見れたらな、なんて思うけれど。
今はただ、この空でまだ舞っていたい。
天使の姿の貴方と共に。
8人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:hoshina
作成日時:2023年5月6日 23時