今際の際 (ページ11)

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彼女の熱が下がっても、俺は彼女を家から追い出すことをしなかった。

この数日で、あまり物の無かった俺の家には、彼女の着替えやらタオルやら、歯ブラシやらの生活品や、彼女が好きだというぬいぐるみや本などが置かれるようになっていた。

彼女はドラマを見るのが好きで、夜は専ら2人でドラマを見る事が日課になった。

ソファーに座ってドラマを見て、寝落ちてしまって朝を迎えることもあった。

最初はドラマなんて…と馬鹿にしていた俺だったが、彼女と見るドラマに限っては「まぁ…見ててもいいかな」と思うようになった。

大抵のドラマは未だに痒くなったり、そんな事ある訳ないだろ、と思うが。

彼女も出て行こうとはしなかった。

居心地がいいのだと言う。

今更ここから出て行っても、彼女には他に行く場所がないのだ。

それならばここにいる方が良いだろう。

俺の生活に彼女が入り込んだ。

それは俺にとって、何ら苦でも嫌な事でも無かった。

ほんの小さな幸せを感じながら、それでも彼女に昔から感じていたこの心のチクチクと痛むような恋心を口にする事は出来ず、何となくモヤモヤしながら…それでも、この関係が崩れてしまうよりかはマシだと思った。

彼女の影響か。

恋愛ドラマに共感する事が多くなった。