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俺にとっての毎日は、とことん変わり映えしない日々である。
昼頃に目を覚まし、午後は街へと繰り出す。
組織に顔を出す事もあるが、他では類を見ない緩い組織で、生存確認と薬の仕入れだけで終わる日もある。
組織に顔を出した日は、解体部署のゾマに必ず捕まる。
軽い世間話と情報交換をして、俺の足はいつものBARに向かった。
「………」
グラスを傾け、店内に掛かるBGMに耳を傾ける。
嗚呼、今日は誰も来なかったか。
バーテンダーが店を閉める為に動き出した。
カランコロン
そのタイミングで来客。
俺は横目で入口を流し見た。
「お店、まだやってますかぁ?」
そこに立っていたのは、七瀬A。
この3年間、忘れた事などなかった。
俺の心の隅でずっと生き続けていた人物。
あの頃よりも窶れ、三つ編みだった髪型は今は下ろしているが、間違えるはずがない。
「……A…?」
「…あ、ネスさぁん…」
彼女は珍しく酔っているようだった。
こんなにベロベロに酔っている姿は見た事がない。
彼女の1歩踏み出した足は、フラッと縺れて身体が傾く。
慌てて立ち上がり、彼女の身体を支える。
折れてしまいそうなほど細い身体、それから熱すぎる体温……。
違和感を感じる。
ベロベロに酔っているからって、こんなに熱くなるか…?
「A、帰ろう。家は?送ってく」
タクシーを手配しようと片手でスマホを取り出す。
彼女は腕の中で「…ない」と小さく呟いた。
「………え?」
そりゃそうだ。
俺は、彼女は地方で会社員していると聞いていた。
今戻ってきたとて、前に住んでいた家は退居済みだろう。
……そうだよ。
あんたなんでいまここに居るの。
こんなに窶れて、珍しく酔っ払って。
聞きたいことは沢山あったけれど、腕の中にいた彼女の顔色が先程までは真っ赤だったのに真っ白になっているのを見てやめた。
「…連れて帰るわ」
マスターに言い、タクシーの手配をする。
とりあえず今日は俺の家に連れていこう。
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作者名:hoshina
作成日時:2023年5月6日 23時