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「っ……あの」
会計を終えたあと、思い切って声をかけた。
いつの間にか店内には俺しか居なかったからだ。
「はい?」
「………」
言っていいものなのか、それだけの事にかなり悩んでいた。
「あ、あの……僕、菅田将暉といいます。
……その、翠は…今、どちらに……」
姉は目を見開いた。
それから、黙ってしまった。
翠はこの実家を公表していた。
売上に繋がるようにと、何かある事に。
故に、翠が芸能界から消えた後は行方を追ってこの店に来た人も多いだろう。
「僕は、酷い事をしてしまいました。
翠がセットの下敷きになった時、怖くて動けなかった。
守ろうって、決めていたのにっ…!!
だから僕、もう一度…翠に会いたいんです。
会って、きちんと話して、謝りたい。
それで……また笑って、あの頃みたいにっ…話がしたいんですっ」
視界が歪んだ。
……嗚呼、そうか。
これが本心だ。
テレビカメラに向かって、毎度発言していた言葉じゃない。
これが、俺の本心なんだ。
同期とかそんなの関係なく、友達として隣にいたい。
「……ありがとうございます。
お時間がよろしければ、家に上がっていってください。
そこでお話します」
俺は勢いよく顔を上げた。
姉が微笑む。
「そこまで菅田さんに大切にされているなんて、翠が羨ましいです」
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作者名:hoshina
作成日時:2019年10月7日 19時