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「菅田さん」
飲み会後のホテル。
マネージャーの部屋に呼ばれた俺は、鋭い目をしたマネージャーと対峙していた。
「はい」
「長野に来てから、やけに挙動不審です。
何をしているんですか?」
言うべきか、言わぬべきか。
心の中で葛藤があった。
だけど、誤魔化すのはやめた。
「誰にも言わんで欲しいんやけど、翠と会った」
「………」
マネージャーは黙ったままだったが、ピクリと眉を動かした。
俺はそのまま続ける。
「俺、ずっと翠に謝りたかってん」
「……あー、菅田さんは翠ちゃん大好きですもんね」
マネージャーは知っている。
俺の大好きが、恋愛感情の大好きである事を。
「………うん」
「はぁ……最初から言ってくれると嬉しいです」
「…ごめんなさい」
「これから、どうするんですか」
「………」
「翠ちゃんと」
「俺は…」
俺は、どうしたい?
そりゃもちろん、また会って話したい。
恋人になれたらいい。
だけど、それは俺の我儘だ。
翠を傷つけた人の中に、もちろん俺も入っている。
だからこそ、再会した時は怖がられた。
なのに、恋人になりたい、なんて自分勝手にも程がある。
黙りきってしまった俺を見て、マネージャーはため息をつく。
「熱愛報道、出たら傷つくのは100%翠ちゃんですよ」
「っ………」
翠は、マスコミがトラウマになっていると思う。
「ちゃんと考えてから行動してください。
翠ちゃんの件は私達の中でも反省しなくてはならないんですから」
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作者名:hoshina
作成日時:2019年10月7日 19時