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17枚目 ページ17

彼が静かにもう1枚、ページを捲りました。

旅行先で撮った、私達家族の写真を写したものでした。

貴方が微笑みました。

『ちゃんと1歩、進めたね』

貴方の体が、ゆっくりと光の粒子となっていきます。

私は悲しくなって下を向きました。

すると、彼の手が私の頭にのります。

「ぶっきー、喜んでんじゃねぇかな……きっと」

貴方も彼も、あまりにも優しい顔をするので、私は泣きながら「そうだね」と答えるしかありませんでした。

『ねぇ、もう大丈夫だよ』

貴方の声にハッと顔を上げました。

貴方はどんどん消えていきます。

『心配すんな。お前には、皆がいる』

「嫌ですっ……先生っ……先生もいてよっ」

貴方はまた、困ったように笑いました。

『お前はいつまで経っても甘えん坊だね。もう、大丈夫だよ。俺がいなくたって生きていける。
…ほら、甲斐が困ってる』

彼は、困ったような焦ったような、複雑な顔をしていました。

「…ぶっきーが、いるのか?」

貴方は微笑んで声をはりあげます。

『おい!甲斐!!』

彼はハッと顔を上げて、キョロキョロと周りを見ました。

『この子を、頼んだよ』

彼はフッと微笑んで言いました。

「当たり前だ」

自信満々の彼の返事に貴方は笑いましたね。

『お前ら、俺みたいに早くに死ぬなよ。アイツらにも言っとけ!』

私と彼は大きく頷きました。

だから私達は、すぐに死ぬ訳にはいきません。

これは、貴方との一生をかけた約束だから。

嗚呼、来世でもう一度、貴方に会えたなら…。

『元気でね』

その時にはどうか、今よりも長く生きてください。

そして、人生を全て満喫してから、眠るように目を閉じましょう。

貴方は私と彼に見送られて、空へと昇っていきました。

彼に粒子が見えたのかは不明ですが、何となく感じる事は出来たのではないでしょうか。

ボロボロと溢れる涙を、彼は無理に止めようとはしませんでした。

本当の本当に、貴方は居なくなった。

あまりにも突然のような、貴方が現れたその時から何となく気づいていたような。

行き場のない喪失感をどのようにすればいいのかわからなくて、私はその場にずっと突っ立っていました。

暫くしてから、彼が「そろそろ帰ろう」と私に言いました。

帰ろう。

そうだよ。

貴方は、本来の帰らなければならない場所に帰っただけ。

私も、本来の帰らなければならない場所…家族が待つ家に帰ろう。

貴方が居なくなった事を悲しんでいたら、また貴方に怒られてしまいますから。

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hoshina(プロフ) - ひいらぎさん» コメント頂きありがとうございます!そう言って頂けて嬉しいです。僕もなんで先生死んじゃったの……って今でも悲しい気持ちになります… (10月22日 10時) (レス) @page19 id: caa281a59c (このIDを非表示/違反報告)
ひいらぎ - 読む度に涙が止まりません。ぶっきーなんで死んじゃったの、 (10月20日 23時) (レス) @page19 id: e6c1a53c18 (このIDを非表示/違反報告)
hoshina(プロフ) - 蒼炎さん» ありがとうございます!! (2020年1月21日 9時) (レス) id: 8ee6c3887f (このIDを非表示/違反報告)
蒼炎 - めっちゃ感動した………!最高かよw (2020年1月20日 23時) (レス) id: 874e279780 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:☆友梨ぃ☆
作成日時:2019年6月11日 22時

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