それもまた、栄光だったよ【3年A組】

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「先生、私なんかを描いていて楽しいの？」

最近になって、急に担任になった柊一颯先生は美術の先生だ。

私が所属している美術部の顧問でもあるから、自然と話す回数も多かったし、なにより美術部には部員がほとんどいなくて、私と先生の二人きりになる事も珍しくなかった。

「楽しいよ。大野からは色んな事が見えるから」

「……何が見えるんだろうね」

私にすらわからない感情が、先生はわかるらしい。

教えて欲しいと思ったけれど、きっと感覚的な事だから先生にも説明出来ない。

「…今は、絶望が色濃く見える………気がする」

「…………へぇ」

「…そりゃそうだよな」

「……同情するの？」

「しないね。大野が助けを求めたら手を差し伸べる事くらいならするけど」

「いいね」

可哀想と、先生は1度も言わなかった。

大丈夫か、とも言わなかった。

先生は、「何かあったらいつでも来なさい」と、私の全てを受け入れるように言っていた。

「…先生は、不思議な人だね」

「ん？何が？」

「本心が読めない。
いつも隼人達に弄られているけれど、本当はそんなのあしらえるくらい強いのかも」

「………どうだろうな」

「否定はしないんだ」

「今の自分と、全く違う自分がいる世界線も、想像してみると楽しいと思わない？」

「話を逸らした」

「俺の事はもういいだろ」

「じゃあ、いつか本当の事を教えてよ」

その時、私がどうなっているのかはまだ想像も出来ないけれど。

「………いつか、ね」

この返答だと、卒業しても教えてくれないだろう、と小さくため息をついた。

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