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3話 ページ3

先生は有名人になった。

だからなのかわからないけれど、先生は個室だ。

遠慮がちにノックをして、ゆっくりと扉を開ける。

ベッドに座り本を読んでいた先生が、私を見た。

「………朱莉」

先生が私の名を呼ぶ。

その声が妙に懐かしくて、嬉しくて、泣きそうになった。

「お久しぶりです。お元気そうですね」

「……そうでも無いよ」

あの頃の元気は何処へやら。

たった数ヶ月しか経っていないのに、声には元気がない。

また更に痩せたんじゃ無かろうか。

「どうした?……その前に、座りなよ」

私はベッドの横にある椅子に座った。

「……先生、私ね。
保育士になる事にしました」

「そう」

素っ気ない返事。

でも、喜んでいる。

「先生みたいに、一人一人を見て真剣にぶつかりたい。
……でも、私は先生みたいに出来ません。
それに、私は小さな子供が好きだから……好きな事を仕事にしたいです」

先生は微笑んだ。

「好きな事を仕事にする。
それは難しい事だけど、充実感は凄いんだろうなぁ。
だからこそ、誰もが追い求めては諦めてしまうんだろうね。
………俺の言葉を覚えてたんだな」

「先生こそ、覚えてたんですね」

先生は私の頭を撫でた。

「出来るよ、朱莉なら出来る」

「ふふ、ありがとうございます」

………言わなければ。

言わなければ。

なんでもない話ばかりをして、言わなければならない事を何も口に出来ていない。

でも、これじゃダメだ。

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rina - hoshinaさんこれからも頑張れ! (2022年12月7日 23時) (レス) @page37 id: 265817b150 (このIDを非表示/違反報告)
rina - 小説とても感動した  (2022年12月7日 23時) (レス) @page37 id: 265817b150 (このIDを非表示/違反報告)
蒼炎 - とても読み入って、泣きそうになりました!!とても面白かったです!感動しました! (2020年1月26日 13時) (レス) id: 874e279780 (このIDを非表示/違反報告)
hoshina(プロフ) - akiraikaさん» ありがとうございます!!そう言って頂けて、ホントに嬉しいです!!これからも頑張ります!! (2019年6月12日 12時) (レス) id: 8ee6c3887f (このIDを非表示/違反報告)
akiraika(プロフ) - とても素晴らしかったです。一行読む度に涙が出てなかなか読み進められない。本当に素敵なお話でした。これからも頑張ってください。 (2019年6月12日 11時) (レス) id: f2ff021446 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:hoshina
作成日時:2019年3月15日 12時

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