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11話 ページ11

「………せんせ」

「ん?」

「………甘えても、いい…ですか」

先生は優しく微笑んで頷いた。

「何して欲しい?」

「……抱きしめて、欲しい」

「いいよ、おいで」

先生が、優しく優しく私を抱きしめる。

「……せんせ、好きです」

「うん」

「好きです……好き、なんですっ……」

「うん、俺も好きだよ」

ポロポロと涙が零れて、先生の服を濡らした。

「死なないで………お願いっ…」

先生の息を飲む音が間近に聞こえた。

「………ごめんな」

酷く穏やかな声だった。

「っ…」

「ごめんな………朱莉」

「やだ……やだっ……先生っ……死んじゃやだっ…」

「……朱莉」

先生は私の背中を優しくトントン叩きながら語り掛けるように言う。

「その泣き方、あの日と同じだなぁ」

あの日……3月10日の朝8時。

先生が、私とさくらの為に飛び降りようとしたあの出来事。

「お前と茅野は、泣きながら「生きて」って言ってくれたね。
……朱莉、俺がいつか死んでしまうのはもう決まっている事だ。
……だから、朱莉のそのお願いには応えられない。
…でも、俺も頑張ってその時まで必死に生きるから。
朱莉には酷く苦しい思いをさせてしまう。
それはわかってる。
……それでも、お前は俺を好きでいてくれるのか?」

「……好きです。大好きです。
あの日、先生が言ってくれたように言うなら……私は、先生の事を愛してます。
苦しい思いをしても、それでもいい。
私は……貴方のそばにいたい…」

先生の私を抱きしめる力が強くなる。

「……ありがとう」

先生がそれだけ囁いて、そっと離れていく。

かと思えば、私の頬を両手でそっと挟んで、優しく甘いキスをした。

私の目から、またポロリと涙が1粒流れる。

「………さ、朱莉。
今日はもう帰った方がいい。
家に帰って、ゆっくり休みな」

「………はい」

病室を出て、その場で暫く放心していた。

部屋の中から、鼻をすする音と「生きたい」「死にたくない」って先生の声が聞こえて、心が苦しくなった。

私は泣きながら、家に帰った。

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rina - hoshinaさんこれからも頑張れ! (2022年12月7日 23時) (レス) @page37 id: 265817b150 (このIDを非表示/違反報告)
rina - 小説とても感動した  (2022年12月7日 23時) (レス) @page37 id: 265817b150 (このIDを非表示/違反報告)
蒼炎 - とても読み入って、泣きそうになりました!!とても面白かったです!感動しました! (2020年1月26日 13時) (レス) id: 874e279780 (このIDを非表示/違反報告)
hoshina(プロフ) - akiraikaさん» ありがとうございます!!そう言って頂けて、ホントに嬉しいです!!これからも頑張ります!! (2019年6月12日 12時) (レス) id: 8ee6c3887f (このIDを非表示/違反報告)
akiraika(プロフ) - とても素晴らしかったです。一行読む度に涙が出てなかなか読み進められない。本当に素敵なお話でした。これからも頑張ってください。 (2019年6月12日 11時) (レス) id: f2ff021446 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:hoshina
作成日時:2019年3月15日 12時

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