3 【Mr.V】 ページ47
当たり前だが、一つ一つの命には個性がある。
それは歴史ある建造物である『ホテルハイタワー』集められたリクルーターも同じ事だ。マスターヴィランズによって与えられた容姿にも個性が光る。
｢ようこそ！人間界へ……私はMr.V。このリクルーティングを成功へ導くための進行をさせて頂きます。｣
事故のあったエレベーターの存在が強いロビーを少し進んだ広間に集まったリクルーターに深々と頭を下げて挨拶をしてから、助手の2人を紹介しようと口を開く前に、気だるそうな声が部屋に響いた。
｢おいおい、いくら人手不足だからってそんなビクついてる人間のガキなんかと……｣
確か彼は……エイトフットのジョー。海の魔女アースラ様の手下か……というか、あれ程怯むなと言ったのに……スキャターだな？と呆れていた刹那、私の横を風が通る。殺意に満ちたそれは、声の主に迷いなく向かっていく。私が止めようと声をかける前に、風は彼を捕らえた。立っていた彼を床に倒し、額めがけてナイフを振り下ろす寸前で私の影がやっと止めた。
｢うちの助手が無礼を……かの有名なマスターヴィランズの1番の手下である優秀な皆さんにお会いできたことに興奮してしまったようで……こら、離れなさいA｣
私が捕らえたAの腕を彼の額からゆっくりと離していく。諦めたAは落ち着きを取り戻したのかスっと立ち上がり、手を差し伸べる。
『失礼致しました……』
｢……お前、人間じゃねーだろ｣
立ち上がってから、埃を払ってそう言った彼はAの整った顔を覗き込むように見つめた。対するAは目もそらさずに、彼の言葉を待っているかのように見つめ返した。その沈黙を破ったのは───……
『人間界にいる時も、同じことを仰る方ばかりでした……ここでも言われるとは、本当に人間じゃないかもしれませんね』
Aだった。
それはとても楽しそうに話していた。人間の子供が今日あった出来事を聞いて欲しいと言わんばかりのオーラが見える。私はAにも呆れてしまうかと思ったが、エイトフットのジョーの元から悪い顔色が更に悪くなる。
彼女は、どんな顔を彼に見せたのだろう。
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作者名：東雲大我 | 作成日時：2018年10月22日 2時
