エイトフットのジョー 《答え合わせ》 ページ40
まだ仕事が残ってるってのに、俺はAに呼び出されてソイツの部屋の前に立っている。ノックをして返事が来てから中に入る。ゆっくり入っていくと｢そんなに警戒しないで下さい｣とAが眉を下げる。
｢んで、何故お茶会に呼んだ？俺を……｣
部屋の中央に置いてあるテーブルに紅茶と菓子が並べられている。それは全てジャックのティータイムと同じ菓子、紅茶(ティーポットの隣に缶があった)だった。ジャックの事件から1週間ほどが過ぎた今、あれからジャックとAが話している場面に何度か遭遇している。どうやらあの一件で仲直りが出来たようだ。紅茶をカップに注ぎ、俺に差し出すと既に冷めてしまった自分の紅茶を口にする。
『答え合わせをしようと思いまして……』
｢は？｣
『今回の一件、エイトフットさんが裏で糸ひいてますよね？』
……ンだよ、お見通しってわけか。Aは優しく目を細めているように見えるが、よく見るとその隙間から蛇のように睨みつけている。静かな怒りだ。
｢契約書に追われてた俺が、どうやって？｣
『ジャックハートさんじゃ、考えられない方法だからですよ……足首を捻るようなエンターテイナー泣かせな事はしないはずですし……そんなダルメシアさんやヴェールさんが本気で怒るようなことしませんよね？』
『でも2人は怒らなかった』とAは続けた。ヴェールがその場にいなかったので怒ってる怒ってないは知らねぇが、ダルメシアは怒ると言うよりは、仲直りをして欲しいと願ったようだ。まあ、どうやって怪我したなんてこたァ俺は知らねぇが……場合によっちゃダルメシアも泣きそうな顔してるんじゃねぇか？
｢へぇ……それで、俺が怪しいと？｣
『どうせ、あなたのお悩みなんですかぁ〜って言ったのでは？』
｢まァ、間違っちゃいねぇよ……お前らのギクシャクしたの見てるとイライラして仕事が捗らねェしな｣
似てねェ俺の真似をしているAに少しイラつきながら、紅茶を飲むとAが深々と頭を下げて感謝と詫びの言葉を貰った。突拍子もない事するもんだから、変なところに紅茶が入ってむせた。
『大丈夫ですか……？』
｢……大丈夫に、見えたか？｣
いえ、全く。と冷たく返すAを睨んでいるが、Aはそんなのお構い無しに茶会を進めた。
これでハッキリした。
コイツの狙いは──────……ジャックじゃない
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作者名：東雲大我 | 作成日時：2018年10月22日 2時
