Happy Villains Story!!【短編集】 (ページ32)

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ホック《大切な……》ページ32

Aはジャックハートが好きなのだろう。

……人間(女性)が歓声を上げる恋愛的な意味でかは知らないが、好きなのだろう……まあ、彼以外のリクルーターもそうだろうがな。失いたくないから言葉を選んで、タイミングを見計らって……なんて無駄な時間稼ぎをやっているAに焦れったいと思っている。

Aは過去に何かを失ったのか？

ヴィランズを目指している以上、そんな感情があるのなら捨て去ってしまった方が楽だ。Aは私が見る限りヴィランズには向いていない。人間で言う優等生と言うやつだ。会う度に何かを大切に持っているように見えるのは、私だけだろうか。

｢なあ、A｣
『はい、どうかしましたか？』

用が済み、部屋から出ていこうとドアノブに手をかけるAを呼び止める。少し気になっていたことがある。

｢首にかけているのは、なんだ？｣
『……ああ、これですか？』

服に隠れたネックレスを外に出て私に見せる。月明かりに照らされてキラキラと煌めいていた首元に目がいったので、帰る前に聞こうと思っていたのだ。チェーンの先には5cmほどの小さな瓶があった。その中には破片のようなものがいくつかあり、どれも大きさは様々だった。

『ミスターが、くれたんです……これは今後のお前にとって大切なものだから、肌身離さず持っておきなさいって』

微笑んで瓶を隠すように、両手で優しく包み込む。何かに祈りを捧げる聖者のように……