ファージャ 《頓挫》 ページ30
｢A、ええか？｣
『はい、どうしましたか？』
分厚い本と紙束を抱え、少しかかとの高いブーツを鳴らし、膝まで隠した長めのスカートをフワリと
｢……勉強熱心やな｣
『……上手く行きませんね、すぐにバレてしまう』
｢いや、人間は簡単に騙せるで｣
Aの顔を突いて言えば、笑顔が消えて口を指先で隠すように触れた。そん時のAの顔は、悪巧みをするヴィランズの顔やった。
｢顔がコロコロ変わるんはオモロいなぁ｣
『メリハリですよ、ファージャさん』
｢表裏やないの？スキャター以外の人間にはヴィランズの顔せぇへんやろ？｣
『営業ヴィランズって言うのもありますよ？』
なんやそれ、笑てまうやん。じゃあ、今見せとるその笑顔は何や？人間を騙す笑顔か、心からの笑顔か、それとも……ウチらを騙すための笑顔か？
『あの、それでご要件は？』
｢ああ、元気づけようと思ってな！｣
『そんな、私は元気ですよ？』
｢嘘つきやな、ジャックハートとなんかあったって聞いたで？｣
そう言うとAは俯いて頬をかく。謝るタイミングはあるのに、それを実行する勇気がないらしい。自分の考えた謝罪が、相手にどう捉えられるか、それに相手を更に不快にさせてしまわないか。とか難しいことを考えてたら、ついに謝るタイミングすらも分からんくなってしまったらしい。分からなくもないけど、アホらしい話やな。
｢あんな、そんなゴチャゴチャ考えてたらアカンで！男はバカなんやから、シンプルに一言で伝えたらええねん！｣
『今、サラッとメンズ・ヴィランズを馬鹿にしましたね？』
｢そんなんええねん！今、Aは謝りたいんやろ？それやったら、ウチはジャックハートを呼んでくる｣
『……!?いや、そこまでしなくても……私とジャックハートさんの問題なので』
それが頓挫してるんやったら、外部のウチらが動かさなアカンやん……って思ったんやけど、ジャックハート呼ぼうにも、アイツ今リクルーティング中やって事を忘れてたわ。
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作者名：東雲大我 | 作成日時：2018年10月22日 2時
