【リボーン】また還るまで、さようなら。【雲雀恭弥】 (ページ5)

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からっぽの持論。ページ5

もし、目の前に自分の力では到底手に入らないような美しい衣服が並んでいたとしよう。

恐らく君はそれを手に取って着てみるだろう。
《ご自由にご試着下さい。》なんて書いてあれば尚更迷いは無い。
何の苦労無しに手に入れた美しい衣服。君はそれを見せびらかせながら歩いて行こうとする。
皆が羨ましがるのを見て、羨望の目に囲まれて。

そこで暗転。

君に近づいて来たある人がこんな事を言い出す。

「なんと素晴らしい服だろう！それを着る貴方はさらに素晴らしい方なのでしょうね！」

だから、これをしてみて欲しい。

ちょっと待ってくれ、と思うだろう。
この服はただ有ったから着たというだけの物で、それによって何か自分に付加価値を求められるなど思ってもみなかった、と。

しかし、その人は聞いてくれない。

「でも着てるじゃないか」。

軽い気持ちで手に入れた物が、逆に自分を突き落とす瞬間だ。

出来なくて当たり前だった事が、出来て当たり前になる。
今まで出来なくても許されていた事が、出来ないと許されなくなる。

だからといって、もうその服を脱ぎ捨てるなんて事は出来ない。
まるで最初から身体の一部であったかのように、張り付いて取れないんだ。
仮に脱げたとして、その瞬間に自分の価値も、認識も、全て失う事になる。

……辛いでしょう？

さあ、ここで上の文章を【衣服】【服】を【肩書き】に置き換えて読み返して欲しい。

【肩書き】とは、【伝説の陰陽師羅神雅道(らしんまさみち)の孫】であり、【並盛神社の巫女】でもある。

生まれながらに持っていた【肩書き】、それに付いてくるかのように持たされた【肩書き】。
それらによって生かされてきた。

それが、私……羅神壱与(いよ)のこれまでの人生だ。