【リボーン】また還るまで、さようなら。【雲雀恭弥】 (ページ15)

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勘違いと規則ページ15

小さく足音が聞こえた。

軽い音だから草壁ではないだろう。が、どう考えてもこの速度は走っている。
廊下は走るなという規則は最早当たり前のものだろうと勝手に思っていたが、どうやら違ったらしい。
このまま飛び込んできた瞬間を殴り付けてやろうと席を立つ。

扉の前に立ったと同時にあちら側の足音も止まり、おや、と思うとノックが３回。

「……」

まさかのそこだけの礼儀遵守に、少し拍子が抜けてしまった。
仕方が無いのでこちらから戸を開けてやると、「ちょ、まっ……心のじゅﾝ……アァ意地悪」とこれまた気の抜けた声が返ってきた後、とぼとぼと女生徒が入室してくる。

「失礼……します……」
「本当だよ。本人の前でよくそんな事が言えるね……まあ良いけど」
「く、口が滑ったって事でお許しを風紀委員長……」
「だからいいってば」
「いいんですかあ……!?」

何なんだこいつは。

少し苛ついてきたが、ここで切れてしまえば元も子もない。この子には別の用事があるのだ。さっさと済ませてしまおう。
と思った瞬間、チャイムの音が聴こえた。

はぁう！と正面で顔を青ざめるのを見て、今更ながら気付いた。
あぁ、そうか！この子には授業が有るんだった。

自分が普段一切受けないものだからすっかり忘れていた。どうしよう。私的な用で生徒に授業をさぼらせるなんて、風紀委員長としての失態だ。
内心情けなさに震えているのはおくびにも出さず、「……取り敢えず、座れば」とわざと緩慢に腕を組み、来客用のソファーに座った。

「教師には僕から言っておくから」
「は、ぃ……えぇ……えー……っじ、授業…………私のエービール……」

エービールって、何。

不意打ちに少し笑いかけたのを堪え、次の服装検査はいつだったか……と事務的な方向へ懸命に意識を逸らした。頑張れ僕。エービールと呼ばれたエーミールの無念は忘れるんだ。

漸く対面に腰掛けた彼女が、今度は真っ赤な顔でうーうーと唸りながら頭を下げる。

……？

「……涎を付けた枕は一生かけて買い取ります……」

もう駄目だとばかりに、僕は机に突っ伏した。