息抜き詰め ページ14
門矢士は『足を一本差し出さないと出られない部屋』に入ってしまいました。20分以内に実行してください。
「何、これ…」
「随分と悪趣味だな」
この部屋も、と辺りを一周する門矢くん。突如真っ白な空間に放り出され、目の前にあるのは、鉈と止血帯と意味不明な書き置き。ここに閉じ込めた人は何が見たいのだろうか。赤で綴られたおどろおどろしい紙を見てそう思った。
「この紙を見る限り、足、切らなきゃ出られないんだよね」
「そうみたいだな」
「…どうしてそんなに冷静なの」
人ごとのように言葉を投げて、興味深そうに不気味な紙を見つめる門矢くんに、少しだけ腹が立った。別に、足が一本無くなろうが二本無くなろうが、そんなことはどうでもいい。門矢くんのためなら、足を差し出すのだって構わない。門矢くんには成すべきことがあるんだから。
私が怒っているのは、そんな単純なことじゃなくて。きっと、門矢くんには、私の考えてることなんか筒抜けで、それを分かっていながら、私の邪魔をするのだ。手を伸ばせば届く距離にあった鉈も、その前にさり気なく立たれたもんだから取れもしない。
「…全部分かってるくせに、ずるい人。私、門矢くんの足手纏いにはなりたくないの。分かるでしょ」
「本当にお前はバカだな。差し出す、というのはつまり、前に出す、という意味だろう?分かりやすく鉈が置いてあるからって、本気で足を切断しようとする奴がいるか」
「え……」
そう言って、門矢くんが小石を蹴飛ばすかのように右足を前に出すと、真っ白な空間が渦を巻き始めた。だんだんと景色が外の世界と入り乱れ、焦る夏海ちゃんとユウスケくんの声が聞こえてきた気がする。
「…良かった、門矢くんが無事で」
安堵した瞬間、膝から崩れ落ちるように座り込んでしまった。門矢くんは面倒くさそうに溜息をついて、私の横にしゃがみこむ。ぱちりと交わる視線に気まずさを覚えて逸らそうとしたのだが、頰を挟まれ、それは叶わず。
「お前が、Aがいなくなったら、俺が困るからな。……海東の相手をする奴がいなくなる」
「…私だって、海東くんに弄られるの、やだもん。門矢くんのばーか」
めちゃくちゃ短いギャグのつもりだったのに。中途半端にシリアスだし、意味分かんないし、オチないし、の三拍子。絶対このお題、シリアスを書くために作られたはずなのに、私の前頭葉が全力でそれを阻止した。
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横峯俊(プロフ) - 星野よだかさん» 私もたまにやってしまいます・・・予測変換って怖いです (2020年1月30日 21時) (レス) id: c8474ba40d (このIDを非表示/違反報告)
星野よだか(プロフ) - 横峯俊さん» ひぇぇお恥ずかしい!盛大に間違えてますね…お見苦しいものを載せてしまい申し訳ございません! (2020年1月30日 14時) (レス) id: 61486b168d (このIDを非表示/違反報告)
横峯俊(プロフ) - いつも楽しく拝見させて頂いてます。一つ変換ミスを見つけたので、修正お願いします。壇黎斗のとの字の漢字が変換ミスしてますよ!これからも応援します (2020年1月30日 12時) (レス) id: c8474ba40d (このIDを非表示/違反報告)
星野よだか(プロフ) - ゆずさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!詩島剛は特に気合入れて書いていたのでそう言っていただけて安心しました。拙い文ですが、これからもよろしくお願いします! (2019年9月23日 20時) (レス) id: 61486b168d (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - よだかさんの書く剛好きでした!これからも応援してます! (2019年9月23日 19時) (レス) id: 59916f9a2d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星野よだか(ほしのよだか) | 作者ホームページ:なし
作成日時:2019年8月15日 20時