そんな2文字で終わらせていいものか【HQ】 (ページ10)

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それから私はコンクールに応募しなくなった。
時々、先生が勝手にコンクールに応募していることもあったが、望んでいたものが取れるわけではなかった。

「なぁ！廊下の絵、見たぜ！『優秀賞』って流石じゃねぇか！」

某幼馴染はそんなことも知らずに背中をバシバシ叩いてくる。痛いからやめてほしい。というか、高校生にもなってなんでそんなに距離が近いのか。

『……夕は、最近どうなの。』

「今はひたすら練習！俺が繋げば勝ちに繋がる。夏のインターハイはダメだったけど春高は絶対行く。」

瞳の奥で炎が燃ゆる。パチパチと火の粉が飛ぶ音がする。耳鳴りがする。拍手の音が反響する。受け取りたくもない賞状を、講堂で、皆の前で、たかが『優秀賞』のくせにあんな賞賛、

『そっか。次は試合見に行くよ。』

「マジか！！絵の練習は大丈夫なのか？」

『え、っと、しばらくコンクールないし。刺激を貰いに行こうかなって。』

いつも、試合がある日は「コンクール近いから見に行けない」と断っていたのを忘れていた。咄嗟に答えたことに嘘は無いが、少しの罪悪感を抱いた。

「Aが試合来てくれるのなんて久しぶりだな！」

何ヶ月も先のことなのに楽しみだと眩しい笑顔を見せる夕。私はそれにゆるりと口角を上げた。

しかし、私は彼の勝利する姿を拝むことは無かった。

それが虚しくて、

そして、同時に負けたことへの"安堵"を感じた。

なんだ、

彼も"同類"ではないか。

次の日、西谷夕は学校に来なかった。