コイバナ【短編集】

うそこく ページ31

『好き。付き合ってほしい』



ウソ告をするのにこんなに緊張している人はいるだろうが、

そんなバカがここに今いる。



こんなセリフを送るんだから、嫌いではなくて。むしろ好きの方なのだが。


ノリでやる。と宣言してしまったことをはやくも後悔し始めている


意気地ない俺に出来ることではありませんでした…っとデリートを押したつもりだったのに


画面には虚しくも送信されてしまって、しかも、既読がついた。



『は？』



短く、素早く返ってきた変身にビクッと震える。


やっべ、嫌われる。


でも、俺は少し新鮮な彼女の反応に舞い上がって、続きを言ってしまった



『ほんとのことだよ、俺じゃ嫌かな』



あぁ、嘘だよ。ごめんね。


確かに君のことは好きだけど、そういう意味じゃないんだ。


心の中で懺悔しながら返信を待つ。


なんて打つか悩んでいるのだろうか。



既読はついているのに返事が返ってこない。


数分後



『ごめんね、君のことは好きだけど、』



彼女にしては珍しい「君」という単語と丁寧な口調。


これを打つためにどれだけ悩んだのかがうかがえる。



あぁ、そうだよ、嘘だ、嘘なんだ。


心の隅に少しだけあった「すき」という気持ちが崩れる音がする。



『あ、ごめん、これ嘘告…』


ちゃんと考えてくれた彼女に申し訳なさと、悲しさが募るばかりで。


『は…！？おまえ…！？」


キレたようなそのセリフにも何も言えない。

言う権利がない。



『ごめんってww許してwww』


薄っぺらい謝罪なんかで許してもらえるわけがないのはわかってるのに


あぁ、申し訳ない、そして不甲斐ない。情けない。



自分を責めることしかできないし事実悪いのは俺だ。


いくらでも責めてくれ、でも嫌いにならないでくれ。




この気持ちが何かはわからないけど、君を少なからず大事には思っているんだ


だからどうか、俺の前から消えないでくれ。



そう、切実に願った。

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