3 ページ12
でも、何かまだ力を付けたいな…。あ、それなら。
「ムービングって、どうやってやるの？」
「ムービング？」
「何だ急に」
「今日、投げてる人、見たから」
「へー、珍しいな」
「ムービングは色んな投げ方がある、普通に握って手首で投げる人や、握り方を変えて三本指で投げる人。まあ、いろいろあるけどよAには必要ないんじゃないか？無理して覚えることでもないし」
必要、ない…。
「おい一也」
「一也君？」
「あ、いや、そういう訳じゃなくって、Aはカーブやスライダーがあるだろ、それにほら、今はスプリットだって覚えてる最中だしあれもこれも手出する必要ないんじゃないかっ、て思って、あー！へこむなよ！」
「悪いけどここは一也に賛成だな。力をつけたいのもわかるがあれもこれも手を出したって仕方ないだろ？まずはスプリットを身につけることから始めよう。それが出来たらちゃんと次のステップアップの球種考えてやる」
「…うん」
そうだよね…、1つずつ…。丁寧にだよね…。
「いや、だから凹むなって！ほら、まだまだ伸び代あるって事だからさ！」
「それでもっていうなら１つだけいい事を教えてやろう」
「いい事？」
「ボールを毎日握ってろ」
「……それだけ？」
「それだけ、ボールは一也にでも買ってもらえ」
「え！？」
「別にいいけど 」
「い、家にあるっ！」
「いーからいーから、寮に行く途中でも買っていけよ、そうしたら毎日触るだろ？」
「…こく」
少しずつ、だもんね。変化球もおとーさんに教えてもらって、今日だって東先輩からホームランは打たれなかった。
少しは、私も成長してるはず。
「もっと、頑張る」
「おう、頑張れ頑張れ」
私も高校生になるんだ。出来ること、増えるよね。
(ゆきくん、こっち見てニヤニヤしてどうしたの？)
(いーや、可愛いなーって)
(え、と…)
(てめ一也あああ！！)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 9人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：星河実羽 | 作成日時：2023年9月9日 14時
