𓂃 𓈒𓏸 ページ3
✘
「二人はこの説明で理解出来ているのよ？ なんで出来ないのかしら」
成功者が二人もいるのだから、悪いのは私。そう言われているみたいで腹が立つ。これだから、『感性』だけで生きてる天才は嫌いなんだ。
どんなに努力しようが練習しようがその時間を使って姉と妹は何倍も先に成長している。そんな二人と比べて『出来ない』と言う。
この家では、私が劣等生。
「しかたないよ、ママ。この子、何やっても出来ないもの」
「そーだよぉ。下手くそだからそんなに怪我しちゃうんでしょ〜。痛々しい〜」
「努力しても出来ない方ってこの世に大勢いるもの。Aがその一人ってだけでしょ？ 無理して苦しめたらいけないわ」
……余計なお世話だっての。
この家に私の味方なんて誰一人としていない。家族にこんな態度を取られてしまうんだ。数人いる召使いにも舐めて見られるのは必然だった。うざい、……うざい。どんだけ時間を費やしても天才には勝てない。どんなに練習したって、その更に上を簡単に登る。うざい。……うざいうざい。
✘
「A」
「ん、……なに、」
少し過去の記憶に触れて気分が悪い。家を出ても、家族から離れても、手を大事にしてるなんて馬鹿みたいで笑える。
でも、自分くらい認めてあげたかった。頑張ったのは本当だったから、結果に繋がることは一生なかったけど、それでも血が滲むような努力だけはしてたから。守りたかったんだと思う。本当に、笑いが込み上げてくる。死にたいのに、手だけは大事にしてるなんてさ、
「なにって。……顔色悪い。寝る？ 別に今日なんもないし」
「……低血圧なの知ってんでしょ、ソレだって」
「え？ ってまた寝てるし。結局寝るんかい」
「なんもないんでしょー。……ゆきむも寝る？」
「あ？ 録音だから無理」
「……、あっそ」
音楽からは切っても切れないのか逃げてきた恋人もまた、音楽をする人だった。もう音楽なんて嫌だと思ってたのに惹かれてしまう自分も嫌。いやだから、……嫌いになりたいのに。
今から録音だというゆきむの袖を引っ張って抱きしめる。
「え。ちょっ、なんだよ」
「……さむい、」
「は？ なら暖房」
「ねぇ、ゆきむ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 57人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Stellar | 作成日時：2022年12月4日 8時
