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 私の事、そんなふうに思ってたんだ……。名前なんて呼ばないでよ。どうせ、あの子のことも呼んだ癖に。一人の女の子幸せに出来ないくせに二人に手出してんじゃないわよ。この、クソ男。クソ、くそ……!


 心の中でいっぱいいっぱい悪口や言いたいことが出てくるのに、涙ばかりが零れる。私ばっかりが好きだったという事実が嫌で、いやで。苦しくて、ここ二、三年の記憶を全部消したくなった。


「……たく、Aはホント泣き虫だな。俺が」
「っ、いやっ!」
「ちっ。……めんどくせぇオンナ。優しくしてりゃ、調子乗りやがって……
お前は、黙って俺の言うこと聞いてればいいんだよ」


 しらない、こんな人じゃなかった。付き合った頃はもっと優しくて、キラキラしてたのに、いつから壊れてしまったの。いつから、いつから。


「俺と付き合えて嬉しかったんだろ? 仕事で疲れて帰ってきてもさ、いっぱい癒してあげたでしょ、俺が。嬉しいって言ってたじゃん、お前。俺が傍に居てやってるんだから頑張れるんだろ? だったらさー、俺の為にお前、金稼げばいいんだよ」
「は……?」
「そもそも、俺がお前を傍に置いておく理由なんてぶっちゃけ金しかなくない? お前イイコだからわがままとか言わないし、ちょーっと褒めるだけで機嫌直るから扱いやすくて良かったんだよ。
ね? お財布ちゃんはそんな簡単に壊れちゃだめでしょ?」


 なに、言ってるの……、この人。

 だって、これまでわがまま言わなかったのは、友達がわがまま言う女の子は嫌われちゃうからって。彼氏が慰めてくれる事は幸せなことなんだから、素直に聞き入れなきゃだめだよって。頑張って仕事して、家賃と生活費を渡すだけで認められるんだから、幸せものなんだよって友達が全部アドバイスしてたから、今まで、わがままも文句も言わずにお金を渡していたのに。


 そっか、そうだ、……ぜんぶはじめから。
 二人して私のこと財布程度にしか思ってなかったんだ……。


「お前が戻ってくるなら今まで通り『いい子いい子』してあげる。ね? ほら、認めてくれるのなんて俺だけなんだからさ」


 差し出される手。
 優しさの色もないおぞましいその手を払い除けて、荷物を持って走るように家から出る。



 ばかだ、私。
 ずっと、ずっと騙されてたんだ。



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作者名:Stellar | 作成日時:2022年10月23日 12時

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