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「!?」
「……飯とか、ちゃんと食ってンの? ちょっと痩せすぎだし、ま。スタイルは良く見えるけど。……なんか、やつれてるって感じ」


 あなたの方が細いしスタイルいいと思うんですけどなに言っちゃってくれてんの。と心の中では叫んでいるのだが、急に抱きしめられた事によりその言葉も「ぁ、う、あっ、」と母音しか出てこない。


「無理とかいっぱいしてンじゃない? ……へいき?」
「へいきじゃなっ、」
「あんま、無理すんなって」


 ちがーーーう!!! 今、なう。この状況が全然平気じゃない。全く平気じゃないの!!! 分かってぇ!!?

 細いと思っていたけれど男の力ってやつは無限大か? と問いかけたいくらいしゆんさんから抜け出すことが出来ない。もう、近いとかじゃない。密!!!! パーソナルスペースは皆無なの!? なんなのっ!!!?


「あーーーっ!!!」


 頑張って抜け出そうとした時に、幼い子がまるで何か見つけた時のような純粋な声が聞こえてくる。

 知ってる、この声を。
 もう多分、一生忘れられない声になってる。







「なんでしゆ、その子に抱きついてるのっ!」
「あれ? もう時間? 早くね?」
「ねえぇー! 僕の話聞いてっ!」
「あ、いや。ごめんごめん。ふつーに会話の流れで」


 嘘つけ。会話の流れでハグをする展開ってそうないだろ。何言ってんだ。いやね?? たくさん励まして貰ったし、泣いて迷惑もかけたと思う。でも、会話の流れでハグをした訳じゃない。いきなりされたんだからな!! 心臓が飛び出るかと思ったよ!!?


「もう、……だからなるべく早く来たかったのに。……だいじょうぶ? 他の皆からなにもされてない……?」
「は、い……、大丈夫だと、思います」
「え、めっちゃ他人事じゃん。ウケるんだけど」


 ハハァッと悪魔みたいな笑い声の後にやっと開放される。そう、この距離感。ずっとこの距離感でいて。耐えられないから。


「ま。オレもーいくから。
……無理すンなよー。自分大切にしろーーー」


 じゃ。っと振り返ることもないまま歩いていくしゆんさん。ぶっきらぼうに見えたけれど、その台詞はちゃんと優しさが含まれている。

 離れた温もり。
 あれだけ心臓がバクバクしていたから離れて欲しいって思っていたのに、離れると寂しくなるのはなんでなんだろう。



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作者名:Stellar | 作成日時:2022年10月23日 12時

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