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先程の台詞を笑顔で言ってくるあたり意地悪な感じが滲み出ている。この人、多分ドSだ。絶対そう。そして結構な肉食系男子だ。それが分かるくらいには思った以上にぐいぐいくる。
ホストだからなのか、素でこれなのかは分からないがコレが癖になる女の子がいそう。実際いるんだろうけど。
「でも本当に、今日は嫌な事とか全部忘れて楽しんでくれるといいな」
「え……」
「……まひちゃんがね。君のこと心配してた。詳しいことは僕聞いてないから分からないんだけど、目もまだ赤いし、それだけ辛いこと。あったんだよね。
初めて会ったばかりの僕には何も言えないかもしれないけど、たくさんたくさん君を楽しませるから笑顔で帰ってほしいな」
今までで一番優しい笑顔。
てるとくんが『まひちゃん』と呼んだのはきっとここへ連れてきてくれたカレのことだろう。裏でも私の事心配してくれていると思うととても心が暖かくなった。本当に、優しい人だな。
それに、私を楽しませる為にそうまさんもてるとくんも動いて貰えて居たと思うと感謝で胸がいっぱいだ。確かにここに来る前は人生で最悪な日。もう死にたいとも軽率に思った。でも、たった一〇分のお話で心が救われるくらいにはここに来てよかったと早くも思う。
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「あ、てるとー? そろそろ時間っぽーい」
ヒラヒラと指先だけを動かして交代のお知らせに来てくれたのは、黒服の子が席まで案内してくれる時に目が合った長髪イケメンのホストだ。
「あれ。もうそんな時間? あっという間だなぁ」
「ンねー。で、ちょウチの子にてるとヘルプ入ってくンない? ご指名。今ちゅちゅに任せてんだよねェー」
「あぁ。いつもの子ね。わかった」
そういえば目が合った時、隣には女の子が居た。そうか、こういう風にダブルブッキングしちゃうとヘルプで変わりに入ることがあるのか……。お客様をホストの居ない状態で一人っきりにする状況を作らないようにしてるんだ。
「じゃあ、僕もう行っちゃうね?」
「あっ。はい……! てるとくん、ありがとうございました」
「ううん。……僕もすごく楽しかった。
また。僕、君に会いたいな?」
「!」
「ふっふふ。待ってるからね?」
最後の最後まで抜かりない。ピンクのかわいい天使で小悪魔なてるとくんに振り回されてるだけだった。
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作者名:Stellar | 作成日時:2022年10月23日 12時