返信 ページ33
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「急に帰ってくるからなんにも用意してなかったじゃないの〜」
「ごめん……」
「お布団、用意しとくから。あんたはお風呂入っておいで」
「うん、いただきます」
急に帰ってきた私を「びっくりした」なんて言いながらも「おかえり」と迎え入れてくれた実家。特に踏み込んだ質問をされるわけでもなく、まずはゆっくりしな。なんていう優しさに心がじんわりと暖まる。
こんなに優しさは近くにあったのに、好きだった人に貰ってなかったせいで忘れちゃってたな……。
ちょっと無理をすれば、彼が笑ってくれると思ってた。
嫌なところもあったけど、文句も言わずに全て受け入れたら円満に結婚の話とか出てくるもんだと思ってた。
違った。
心が、苦しいだけだった。
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あ、そういえば、連絡……。
ゆきむらさんが最後に言っていたことを思い出して髪を乾かしながら今日貰った名刺を広げる。ゆきむらさんのものだけ紫ベースに白いフォント。他の皆は黒の背景にちょっとだけ各々のカラーがグラデーションされたもので、ちょっと違和感を感じるもののそういうものかで片付けた。
「……え、フォロワーすご、」
ホストってこんなにフォローされるものなの？ なんて思いながらスクロールしていく。つぶやきは基本『今日も来てくれてありがとう。また待ってる』みたいな文章と出勤日が各々固定ツイートに書いてある。
「へぇ、土曜日の夜は全員出てるんだ、」
今日がたまたま土曜日。『One Knight』の公式アカウントで見つけた情報。土曜日の夜だけ特別に体験出来るという初回『Ａコース』を試してきたんだな。狙ったわけじゃないのに、なんてラッキーなんだ……。
今までの不幸が幸福を呼んでくれたりして。ははっ、……あんまり笑えないな。
「……ゆきむらさん、だけでいいのかな。送るの」
確かに言われたのはゆきむらさんだけだけれど、他の方にもお礼を言うくらいいっか。と思いながら全員に自分の本名と特徴、それから『本当にありがとうございました』という文を付けて送る。
「あーー、なんか、今日は疲れた……」
明日は休みだし、もう、気を使う必要はないんだから眠ってしまおう。
なんだか、いい夢が見られる気がする。
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作者名：Stellar | 作成日時：2022年10月23日 12時
