君との日常

＊ ページ32

｢瑞輝〜チーズケーキ、あるよ？？食べる？｣


『……』



ついに、声も出せなくなった。



苦しそうにもがいて、悔しそうに隠れて泣く瑞輝を私はただ抱きしめるしか出来なかった。



私と瑞輝の話す手段。

あいうえお表を指さす会話。ただ、それだけ。



それも、ほんとに大変そう。


涙目で見つめる瑞輝。


細い手には、私が編んだミサンガ。


｢瑞輝、笑え。｣





たくさんの寄せ書き、千羽鶴。

甲子園を決めた仲間からのウイニングボール。



微笑んで、口パクでなにかを言う瑞輝。



『生・き・た・い』



瑞輝…


そして


『あ・り・が・と・う』



．




そして瑞輝は、私が放課後、病院に向かってる時に、息を引き取った。


電話がかかってきたとき、周りの目なんて気にしないで1人で大声をだして泣いた。



静かな病室に響くすすり泣く声。


瑞輝？起きてよ。

笑ってよ。私の手、握ってよ。


ほら、寝てないで、寝てないで起きてよ！



自分が悔しい。

瑞輝を支えるって約束したのに。

泣いてばっかり、瑞輝に支えてもらって。

ほら、瑞輝…

『お前、弱いなぁ』

って、またあの時の笑顔で笑ってよ…









母｢Aちゃん。瑞輝がAちゃんに最後に伝えたかったメッセージ預かってるの。


瑞輝のLINEで送るから、受け取ってあげて？｣





A、今までほんとにありがとう。


笑え。幸せになれ。


また会おうね。


瑞輝より




視界がぼやける。


母｢これね、瑞輝が目を瞑る1時間前ぐらいだったかな。最後の力を振り絞って表を指さしたの。｣


その後に送られてきた動画。


ゆっくりゆっくり、でもニコッとしながら表を指さす瑞輝の姿。



｢瑞輝…ありがとう…

私、瑞輝の力になれたかな。

野球部みんな、甲子園で戦ってるよ。

空から見守ってあげてね。

私、幸せだったよ。瑞輝に出会えてほんとに良かった。｣



もう開くことのない瑞輝の可愛い目。

もう上がることのない瑞輝の口角。

もう見ることのできない瑞輝の笑顔。




母｢Aちゃん、最後まで瑞輝の生きる原動力になってくれてありがとう。Aちゃんのおかげで余命なんて飛び越えて、8月まで生きれた。余命7ヶ月が8ヶ月も生きれた。ほんとにありがとう。｣




瑞輝、また会おうね。


ずっと見守っててよ？私、何やらかすか分からないから笑


危なっ！って思った時は止めてよね？


うふふ、冗談。笑


瑞輝、18年間おつかれさまでした。

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