仕事依頼 ページ9
朝、いつもより静かな教室に疑問を覚えつつドアを開ける。
するとやはりみんな揃ってるのにやけに静かで。
「ねぇ、どうしたの？めっちゃ静かじゃん」
すると急に口を手でふさがれる。
「見て分かんないわけぇ？Aが寝てんの、静かにしなよねぇ」
指さした先には確かに机に突っ伏して眠る姿。
天使のような寝顔とはよく言ったもので、本当に可愛い。
駄目だこれ、可愛いしか言えない。語彙力いくらあっても足りない。
ちなみにもりっちと三毛縞くんはうるさいからか×を描かれたマスクをしていた。
うん、普段からそれくらい静かだと助かるかな。
にしてもせなっちがこうも優しいのは珍しいな…とおもいAちゃんをよく見れば目元にクマが。
「なるほど、せなっちはこれが許せないわけね」
「はぁ？だってこいつ家でろくな食事とってないっていうし、アイドルとしての自覚が足りないんじゃないの」
「えっ何それ初耳なんだけど…？」
クマがあるくらいだからよく寝てないだろうし、その上ろくに食べてない？
いったい親はどんな状態なんだと思うが、そういえば彼女から親の話を聞いたこともない。
「一人暮らしだと作る気が起きない、ってさ。ったくそれくらい管理できるようになってから一人暮らししたらいいのにねぇ」
もぞ、と彼女がわずかに動く。
疲れていたのか、はたまた何かあったのか。
さっきからじっと見ていた天祥院くんが、急にニコニコ笑いだした。
うわ何怖いんだけど。
「ん〜、全然起きないし先に伝えちゃうね？今朝仕事依頼が来ててね、全A組で撮影会だって」
「はぁ？なんでまた急に」
「うん、急だよね。ちなみに明日だよ」
さらっと告げられて、面倒だとは思う。
しかし彼の無邪気にめんどくさいことは知ってるのであきらめるけど。
「あ、海で遊んでるところの撮影だから日焼け止めは持っておいでね？僕は見学だけど」
…今なんて言った?
イマ、ナンテ、イッタ??
海？え、水着…？
Aちゃんもいるよね、えっ待って。
困惑して固まる皆の中で、ひとり楽しそうに天祥院くんは笑った。
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作者名：こひな | 作成日時：2019年3月23日 19時
