震え ページ21
Aside
奏汰くんは、どういうルートか知らないけれど、私の両親と連絡を取ることに成功したらしい。
その日の夜。私の家といわれても笑っちゃうくらいおっきな家の前にいた。
私と、付き添いの奏汰くんを案内してくれたお手伝いさんは、最初私を見て怪訝そうにしていた。
無理もないか、追い出されたんだし。
両親を見たとたん、見覚えもないのに、変に震えが走った。
怖い。
とにかく、漠然と怖い。
「お、おとうさ…」「おかえり」
遮るように、冷たい声がした。
その目から、感情が読み取れない。
「安心してほしい、彼との婚約はもう破棄した」
「…え？」
「仕方がない、契約上もそこまで重要な相手じゃなかったしな」
へたり、と力が抜ける。
なんで、今の今まであんなに気を張って。
でもほっとして笑顔になりそうになる。
その瞬間。
お父さんは、私を地獄に突き落とす宣告をした。
「羽風さんのところの子と付き合ってたんだろう？よかったな、長男さんとの縁談が決まったぞ」
「…ちょ、え、」
何も言えない私を見ようともせず、つらつらと続ける。
「もともとあの家との縁はあったほうがいいと思っていてな」
ひゅ、と喉から変な音がした。
「わ、私が好きなのは、薫くんで、弟のほうの…」
「知っている」
「…、」
「だから、別れなさい。お前のためだよ」
とたん、ぱん、と乾いた音がした。
見れば、お父さんを叩いたのは奏汰くん。
私の腕をぐい、と引いて歩きだす。
「ちょ、ちょっと…」
「『しんそこ』はらがたちました」
奏汰くんはその可愛い顔を、怒りをあらわにしてお父さんを睨んだ。
「Aはぼくのいえで『ほご』します」
それだけ言って、私を連れて走るように家から去った。
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作者名：こひな | 作成日時：2019年3月23日 19時
