【評価100越え記念SS】�� ページ40
「こんにちは」
「ぅエッ！？こ、こんちは…？」
「んはは、驚いてる。花垣武道くんでしょ」
武蔵神社、逢魔が時。
空は濃いオレンジ色を溶かしたような色をしている。
花垣武道は、今晩行われる東京卍會の集会会場に一足早くやってきていた。
理由は特に思いつかない。しいて言うなら何となく。
そうしてぼうっと、石階段に座ってぼんやりしている時に、突然横から声を掛けられた。
容姿の特徴として特出したものは特にない。
身に着けている制服はこの辺の高校のものであることは考えればすぐに分かった。
そして驚くほど肌が白くて、どこかミステリアスな空気を纏う雰囲気が印象的だった。
突然声を掛けられたことに驚いて、武道はそれから「あぁ、はい」と気の抜けた返事をする。
知らない女の子に声を掛けられた時にどう反応するのが正解なのかは正直わかっていない。
「早いね。花垣くん。今日は集会？」
「アッ、知ってんスね！誰かに用事スか？」
「気を回してくれてありがとう。でも用事とかじゃないからいいんだ」
ふわっと笑った少女の顔が、一瞬もやがかかったように曇って見えた。
武道は目を何度か擦ってもう一度少女の顔を確認する。今度ははっきり見えたところを見ると、もやがかかっていたのは自分の見間違いらしい。
「花垣くん」
「あ、何すか？」
「三ツ谷くん元気？」
そう武道に聞く少女の目は優しい。
例えるならば、何か愛おしいものを思い出すような、そんな感じ。
流石の武道もそれには気が付いたらしく、答えの言葉を選んでごくりとつばを飲みこむ。
そんな武道が愉快だったのか、少女は鈴の鳴るような声で笑った。
「元気じゃない？」
「や、げ、元気ッス！」
「そっか。よかった」
遠くから、インパルスのエンジン音が聞こえてくる。
どうやら三ツ谷もいつもより早く来たらしい。
少し待っていれば会える、と伝えたところ、寂しそうに笑いながら少女は首を振った。
「会わなくていいんすか…？」
「いいのいいの。君は優しいね」
温かい夏の風が吹く。
木々の擦れる音の中で、少女は空を見上げていた。
「花垣くん」
「なんすか？」
「彼のこと、守ってあげてね」
少女の口から出た「彼」が誰を意味するのか、武道は何となくわかっていた。
少女は武道の声を待たずに言葉を続ける。
「死んでいい人じゃないんだ。優しくて、かっこいいお兄ちゃんだもん」
ありったけの愛しさの詰まったその声色でそう告げて、少女はにっこりと笑った。
【評価100越え記念SS】�□�←【あとがき】09/05追追記
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花蘭(プロフ) - 全然読みにくくなんてなかったです。言葉１つ１つがより作品に引き込ませてくれて、とても感動しました。素敵な作品をありがとうございました！！ (2021年8月31日 17時) (
レス) id: 7a9bcca966 (このIDを非表示/違反報告)
やま - 最高でした。素敵な作品をありがとうございます。 (2021年8月30日 21時) (レス) id: 8661ddee6b (このIDを非表示/違反報告)
あおちゃん(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございます (2021年8月29日 17時) (レス) id: 5ff916f516 (このIDを非表示/違反報告)
優菜(プロフ) - とりま泣きました。ありがとうございます (2021年8月29日 5時) (レス) id: f74092ff06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：晴海 | 作成日時：2021年8月26日 16時
