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砂利を踏む音だけが響いている。
陽は既に沈み切っているせいか空は暗い。
街灯が少ないせいか空の星がよく見えて、普段から都会のネオンの中にいると気が付かないもんだな、なんて、改めて考えた。
「み、三ツ谷くん歩くの早いってえ！ ってか夜にこんなとこ来んの怖ぇ…。…、…三ツ谷くん！？三ツ谷くんどこ！！ オレのこと置いていかないでよ三ツ谷くんてばあ！！」
「タケミっちうるせえ。いい大人が近所迷惑だろうが」
「それは三ツ谷くんがオレのこと置いてくからじゃ」
「ひでえなぁタケミっち。オレが折角連れてってやるって言ってんだからついてこいよ」
「う…ウーッス…」
「はは。拗ねんなって」
ここに来たのは初めてじゃない。
ただ、誰かを連れてくるのは初めてだった。
夜風が冷たい。
頬を撫でる夜に吹き抜けて、落ちた葉を巻き込んで消えていった。
「っていうか三ツ谷くん！」
「なんだよ」
「さっきオレのこと近所迷惑〜とか言ってたけど、三ツ谷くんだってインパルスでデッケ〜音出してたじゃないスか！」
「オレはいいんだよ」
「エェ〜…ンな横暴な」
ころころと表情を変える隣を歩く男に笑いかけて、再び歩を進める。
こいつにも随分と世話になった。
ゆっくりと目を閉じる。
瞼の裏に今でも鮮明に浮かんでくるのは、あの忘れられない夏。
恋人とも友情ともつかない歪な関係と、心地よかったあの空気。
年上のくせに、年下みたいな顔をして
年下みたいな顔をするくせに、たまに年上みたいなことを言う。
素直かと思ったら変なところで頑固で、でも誰よりも優しいやつ。
「で、三ツ谷くんの会わせたいやつって誰なんスか？」
「オレの彼女」
「え！？」
「冗談」
「…ッスよね！ そんな話聞いたことないし」
「言ってねえからな」
オレの彼女。
彼女に、なってほしかったやつ。
『この音が聞こえたらさ、三ツ谷くんのインパルスだ〜ってすぐわかるの。嬉しいんだ。近くで走ってるってわかるから』
『どうせだったらさ、誰よりもかっこいいやつでいてよ。かっこよくて優しいの。最強じゃん』
『三ツ谷くん』
『君が大人になったらさ、そのインパルスで迎えに来てよ』
13年前。
オマエがそう言ったから、デカい音鳴らしてここまで来たよ。
「三ツ谷くん」
「んだよ」
「薔薇の花束ってなんか、ロマンチックっスね」
「だろ」
握られた花束が、甘い匂いを撒きながら揺れる。
あの頃、オレたちはまだ子供だった。
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花蘭(プロフ) - 全然読みにくくなんてなかったです。言葉１つ１つがより作品に引き込ませてくれて、とても感動しました。素敵な作品をありがとうございました！！ (2021年8月31日 17時) (
レス) id: 7a9bcca966 (このIDを非表示/違反報告)
やま - 最高でした。素敵な作品をありがとうございます。 (2021年8月30日 21時) (レス) id: 8661ddee6b (このIDを非表示/違反報告)
あおちゃん(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございます (2021年8月29日 17時) (レス) id: 5ff916f516 (このIDを非表示/違反報告)
優菜(プロフ) - とりま泣きました。ありがとうございます (2021年8月29日 5時) (レス) id: f74092ff06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：晴海 | 作成日時：2021年8月26日 16時
