ホラー短編集 (ページ2)

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ひきこさん　弐ページ2

女の人が川を渡ってこっちに向かってくるので僕らは急いで逃げた

途中でＢ君と離れてしまったが、そんなことお構いなしに無我夢中で走った

しかし、現実は酷であり、ひきこさんは僕の方に来て、とうとう捕まった

「ヒッ……………い、やだ…無理……誰か………イ‟ッ」

ひきこさんはその細い腕からは信じられない程の力で僕の腕を掴み、足と、腕の骨を折った

「う…あ………………いだい………ﾊｧ、ﾊｯ、もうやだ…なんで…ｯ」

そして、ひきこさんは僕の腕だけを掴み、ものすごい勢いで引きずり回した。

当然そうなると僕の顔や胴体は地面や石にに擦り付けられるわけで

「い‟ッ、痛い！痛いよ！やめ、やめて！なんで！ギャッ…ｯう、あああああああ！！！
　お母さｧん！！お父さん！！助けて！！いや！怖いよ！！！ぐぅ…ア……ｯｹﾞﾎｯｺﾞﾎｯｶ…ｯ
　もうやだｯなんでぇ！う‟あ‟あ‟あ‟あ‟」

皮がむけ、骨を打ち、肉が見えても、ずっと、『ひきこさん』は止まらなかった

痛みを訴えても、ひきこさんはずっと笑ってる

野原を駆け回る子供のように、僕を掴んで雨の中

ずっとずっと、笑ってる

いたいよ

こわいよ

……あーあ

.

Ｂ君が犠牲になればよかったのにな

―――――ひきこさん【完】―――――――