居場所をなくした先の店で【浦島坂田船】

遠くへ ページ47

浦田side

まーしぃとセンラがあいつの足止めをしている間に、俺たちは急いで車へと向かっていた

2人が作ってくれたこのチャンスを無駄にするわけにはいかない。急いで車の中を確認する

雷雨のせいで太陽が隠れているため車内は真夜中のように暗く視界がかなり悪い。目を凝らしていると

さ「うらさんっ、これで見える？」

と坂田が火を作ってくれていた。…以前見た時よりも火が大きい。坂田だけじゃない。この雷雨だって、以前までのものより強くなっている。まーしぃだって同じだ。みんな、みんな強くなっている

でも、1人でも欠けたらきっと、俺たちはそもそも今こうしてここでAを探すことさえ出来なかっただろう

坂田に礼を言い、俺は再び車内を確認した。心做しか少し落ち着いた気がする。坂田の火のおかげだろうか？

中は一般の軽自動車とほとんど何も変わらない。黒を基調とした座席と灰色っぽい壁の色。唯一他と違うのは、そこに人が縛られているということだけだ。人目見てわかった

Aだ

手足を縛られ、目隠しをされ口は布をくわえさせられている。抵抗している動作などもなく、恐らく気絶しているのだろう

さ「うらさん！おった！おったで！」

う「しーっ、静かに。いくらこの雨でも俺らの声が聞こえないわけじゃねぇんだから。ほら、今から開けるから火の準備しとけ」

そう言って地面にある種を落とした。するとツルがぐんぐんと伸び、俺の身長より少し低い所まで伸びると俺はくいっと指を車の鍵穴に向かって動かす

その途端、そのツルは鍵穴に向かって伸びていきやがて鍵穴の中に入ると間もなくカチリと音がした。その後ツルは根元から枯れて跡形もなくなった

これで上手く車のドアを開けられただろう。いくら俺たちのような存在でも物体をすり抜けるようなことは出来ない。幸いこの車には鍵穴があったのでより慎重にドアを開けることが出来たが、もしも無ければ力ずくでドアを開けなければならなかっただろう

う「よし、早く連れてくぞ。坂田、縛ってるやつ全部切ってくれ」

さ「言われんくってもわかってるって〜」

坂田の周りに漂っていた火の玉が縄や布を焼いていく。ちゃんとAに害のないように慎重に焼き切っていく。最後のひとつが切れた時、雷雨が少し弱まった。あの二人が限界に近い。急がなければ

俺は直ぐにAを抱きかかえ、できる限り車から遠く離れた。坂田が後ろで「俺もA抱っこしたい〜！」という呑気な言葉は呆れつつ無視した

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