【募集企画】東方幻想記録物語 15巻 (ページ28)

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幻想入りする神童　六条秋ページ28

現状報告―――なんか落ちてる。

「不可思議だな……」

顎に手を当てつつ、重力に引かれるがまま落ちていく俺―――六条秋。絶賛紐なしバンジー中の人間としては些か冷静すぎやしないか、と思うが、解決策がない以上どうしようもない。
落下していく先には、そこそこの規模の木造一軒家があった。このままだと屋根にぶつかってジ・エンドである。いやはや、なんとも早い御臨終かな。せめて持っている証券を全部売ってから死にたかった。それだけで少なくとも数十億は俺の口座に転がり込んだ事だろうに……。
屋根が近付いて、衝突するまで三、二、一―――ズドン。

「うおぁっ！なっなんだぁ！」
「おい志貴、背中に爆睡中の人間が居るってのに騒ぐな」
「いや、だって人が……って俺もそうだったか」

人の声がするのは、幻覚か黄泉の国の人間か。黄泉比良坂を行った記憶はないのだが、もしかして俺は伊弉諾なのだろうか。
正面にいたのは、タメくらいの人間が二人―――否、三人だった。片方が誰かを背負っている。というか、その背負われている人間は何か見覚えが……。

「……ええと、ここはどこだ？」
「あー……それを英語で」
「……？Where is here?」
「あああああ！真央、こいつガチの人だ！バリバリ本場の発音で返された！EDU16、17くらいある！？」
「落ち着け、落ち着くんだ志貴！例え此奴が本場の人だろうと私達が劣っている訳ではない！」
「……質問の答えになってないんだが」
「あ、うん、いやすまん。えーっと、なんて言ったもんかなぁ」
「というか、その背中に居る奴……」
「そうだった。志貴、まずは布団敷いて咲を寝かそう」
「―――咲！？まさか、雨本咲か！？」
「え、いや、そうだけど……」

俺は座っていたところから途端に立ち上がって、志貴とかいう奴が背負っている奴を覗き込んだ。人の背中の上でのんきに爆睡していたそいつは、見間違えるはずもなく咲だった。

「現在時刻……星を見る限り10時は過ぎてるな。じゃあこいつは起きんだろな」
「ウェイト、勝手に話を進めるな。お前と咲は知り合いなのか？」

布団を敷き、咲を寝かせながら志貴が聞く。

「そうだな。そういって語弊はない。……名乗りが遅れたが、俺は六条秋と言う」
「俺は神凪志貴だ。よろしくな、秋」
「鬼灯真央ですどーも」

この時の俺は知る由もない事だが、俺は幻想入りとかいうのをしたらしい。俺が偶然落ちてきた場所は幻想入りした連中のシェアハウスであったらしく、俺は自分の運の良さに呆れるのだった。