蓬莱人と人間の少女 薬師寺依織 ページ2
「そういやぁ嬢ちゃんの名前を聞いてなかったな」
少女をおぶさって自宅に戻ってきた依織は、少女を寝かせて囲炉裏に火を入れてから言った。ぱちぱち、と火花の散る音が鳴る。
「あ、はい、すみません……私は大和撫子と言います。名乗り遅れてすみません」
「なんで名乗るだけで二回も謝ってんだ。爺相手に若人が遠慮するんじゃねぇ。ちょっとぐらい図々しくなれ」
「うぇ、そうですか?……そうですよね、はい。すみません……」
「だから謝る必要はねぇんだっつの」
「あっ、はっ、はい……わかりました……すみません……」
また謝りやがった、と依織は嘆息する。一体全体どんな教育を受けたらこんな消極的な人間になるのだろうか。……否、撫子のそれは消極的とも何か違うような感じだった。撫子をおぶさって自宅に向かっていた時も、妖怪や野生の動物に遭遇したが撫子は一切反応していない。先程も怪我をあちこちに負っていながら平然としていたし、熊に襲われても抵抗一つしていなかったし、撫子はどこかズレているような気がした。
「あ、依織兄ちゃんお帰り!ねぇねぇ大決闘祭凄かったよ!ばーんってなってどーんってなって、ずばばばーって感じ!明日もやるんだって、楽しみだよね!」
「おーそうかい、そりゃ良かったな。俺も明日は行こうかねぇ」
「依織兄ちゃんだぁ!その女の子誰?依織兄ちゃん奥さん居なかったよね」
「はは、そう見えるか?」
「あら依織さんこんばんは。この前はうちの子と遊んでくれてありがとうねぇ」
「大した事じゃねぇさ。お前さん家の坊主、剣のスジは中々良かったぜ」
間口の外から、大決闘祭帰りの里の住人が声をかける。依織が里の住人と話していると、撫子がぽつりと呟いた。
「……依織さん、人気者なんですね」
「ん、まぁ嫌われちゃいねぇな。俺のやりてぇ事をやってるだけなんだが、不思議なもんだ」
「やりたい事をやって、それが人の為になる……」
布団の中でもぞもぞしながら、撫子が反芻する。
「ま、若人はそんな事考えなくたって良いんだよ。人の為に何かしなくちゃってのは大人が考えるこった。若ぇ内はやりたい事やって、肩肘張らずに真っ直ぐ生きりゃ良い」
依織はそう言って笑うと、撫子の頭をわしゃわしゃする。髪の毛が乱れたのが気に障ったのか、撫子は少し嫌そうな顔をしていた。
「なんだ、そんな顔もできんじゃねぇか」
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シオンはアムルガムの派生(?) - 更新しました。お話がいっぱいになっちゃったので続編を作らせていただきました〜 (2022年12月24日 16時) (レス) id: da22832432 (このIDを非表示/違反報告)
シオンはアムルガムの派生(?) - 更新します (2022年12月24日 15時) (レス) @page46 id: da22832432 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜紅葉(プロフ) - 更新しました! (2022年12月23日 20時) (レス) id: 3b8feebb6c (このIDを非表示/違反報告)
十六夜紅葉(プロフ) - 更新します! (2022年12月23日 20時) (レス) @page45 id: 3b8feebb6c (このIDを非表示/違反報告)
十六夜紅葉(プロフ) - 天洲秋さん» わかりました! (2022年12月23日 20時) (レス) id: 3b8feebb6c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サナティ x他9人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/
作成日時:2022年12月7日 14時