Hope In The Darkness Ⅲ (ページ22)

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深澤は小さなセキュリティ会社の事務所を訪れていた。
深澤が捕まえたのは女ではなくある情報屋。深澤が歴代の依頼人のコネを頼りまくって辿り着いたのが彼だった。
深澤の前に座る眼鏡の男はスケッチを描いている。6と名乗った男の顔を知っていると言ったので描き起こしてもらっている。これを阿部に見せれば何か閃くかもしれない。

莫大な金と引き換えに欲しい情報はどんなものでも手に入る、という噂だけは深澤も聞いた事があったが、まさか世話になる日が来るとは思っていなかった。
その実力は本物らしく、彼は「Team S」が大臣を襲撃した事も、飼われていたラウールを救出した事も知っていた。

fk「……どうしてそれを」
「盗聴しました」
fk「盗聴……?」

情報屋は早口で無機質に答えるとスケッチする手を止め、置いてあったPCを操作した。

《……Joker》
《え……?》
《………どうすんの、この子》
fk「これ、」
「あの家には何個も仕掛けておきましたから」
fk「そんな事できるんですか」
「金持ちや権力者になればなるほどセキュリティを厳しくしようとします。そうして彼等は、セキュリティ会社の人間を名乗る見ず知らずの人間を簡単に家にあげます」
fk「……なるほど」

淡々と説明を終えた男は再び鉛筆を動かし始めた。

fk「……その、6って奴は何者なんですか」
「ある地下組織を束ねる人間です。貴女方が襲った大臣と組んで総理大臣を暗殺しようとしていました」
fk「ぅえ!?」

予想だにしていなかった話を聞いて思わず変な声を出した深澤は、慌てて咳払いで誤魔化した。
情報屋が再びPCを操作すると聞こえて来たのは男達の話し込む声。確かに暗殺の計画を話し合っていた。片方の声は聞いた事がある。その声が6と名乗った男だろう。
そして時折聞こえる悲鳴や泣き声。その主が分かって深澤は顔を顰めた。

fk「……Fっていうのは?」
「6の事です。彼は他にもいくつかの呼称を持っています」
fk「じゃあ、この人が大臣を消すように言ってきたのは、」
「大臣が計画から手を引こうとしたからです」
fk「でもこんな計画間違っても洩らす訳にはいかない、だから」
「貴女方に依頼し、生き残った彼も消そうとしている」
fk「何で暗殺なんて」
「金も権力も手に入れた彼が次に欲しがったのが国だっただけです。腹心を総理にしてしまえば、司法も何もかもを思い通りにするのは時間の問題です」
fk「……良くもまあそんな事」

金持ちの野望は底知れない、と深澤は苦笑した。