16 ページ16
病室を出た所の椅子に座ると、開口一番深澤は阿部に声をかけた。
fk「……阿部ちゃん、頼みがあるんだけど」
ab「……また同情したの」
深澤の言わんとする所を察したのか、目の前に立った阿部は先に牽制した。
fk「あいつに昔何があったのかを調べて欲しい」
ab「何の情報も無いのに?」
fk「……目黒蓮、歳は多分俺の5個くらい下、俺達の施設にいた」
目黒の情報を口にした深澤に阿部はため息を吐く。
ab「首突っ込んでどうすんだよ」
fk「あいつあのままだと死んじゃうよ」
ab「そもそも殺す前提だったよね」
fk「ごめん殺したくない、なんなら仲間にしたい」
ab「……照」
深澤と話しても埒があかないと思ったのか、阿部は壁にもたれて立つ岩本に話を振る。しかし岩本も首を横に振った。
岩本が阿部側につく事は無い事を悟り、阿部は再び深く息を吐いた。佐久間は深澤の隣に座ったものの、話には入らずに怪訝な表情を浮かべているだけ。
fk「……警察と親戚と施設の人達が何もしてくれなかったとか、裏切られたとか言ってた」
ab「……」
fk「それで人間不信になってずっと一人で生きてきたんだと思う。ほとんど寝ないで、殺しもやって……体も売って」
sk「……え」
ab「体売ったって、」
fk「言っとくけど翔太とは訳が違う、それ以上の事を……多分、手慣れるぐらいにはやってる」
それには流石の阿部も黙り込んだ。佐久間もぽかんと口を開けた。
可哀想。その言葉選びが正しいのかは分からないが、阿部も佐久間も何も思わない程薄情ではなかった。
きっと彼は、ここにいる誰よりも辛い生き方をしてきている。
fk「ねえ頼むよ。最悪仲間にしなくてもいい、せめてもう少しましな生き方が出来るようにさせてやりたいんだって」
ab「……顔見られてるんだから仲間にするしか無いでしょ」
fk「じゃあ仲間にしたい、その前にあいつが抱えてるものが何なのか……俺達でどうにか出来ないのか知りたい」
ab「……舘さんになんて言うつもり」
fk「それはこれから考える」
阿部は目線を床に落としてしばらく考え込むと、深澤に突然手のひらを見せた。
fk「何」
ab「煙草寄越せ、持ってんだろ」
深澤はポケットに手を突っ込んで煙草の箱を差しだした。その後、一本咥えた阿部にライターの火を近づける。
阿部に煙草をやったついでに深澤も一本吸い始めた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1672人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
怜(プロフ) - 如月ﾖｼﾉ。さん» ありがとうございます! そうですめめです! ゆっくりですがこれからもお付き合いよろしくお願いいたします! (2020年7月16日 21時) (
レス) id: 03141f9b41 (このIDを非表示/違反報告)
如月ﾖｼﾉ。(プロフ) - 移行おめでとうございます！次の加入組はめめですかね？今後の展開も楽しみにしています！ (2020年7月13日 0時) (レス) id: 3bc10946d5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：怜
| 作成日時：2020年7月12日 15時
