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生と死 ページ10





『…心臓移植をしたの。』


これ以上は言わなくてもわかるだろう。第一、確証のない話だから。


「…嘘だろ」


『赤音さんのものがどうかはわからないけど、私が心臓移植したのは本当のこと。』


手術痕を見せるため、とはいえなんだか気恥ずかしくて、私はまたボタンをかけ直す。呆然としたような、唖然としたような、そんなココの姿がいたたまれず私はまた口を開く。


『心臓の音、聞く?』


今度のココは答えなかった。それでもこくりと小さく頷くことで、私に応えた。そろそろと距離を縮めていったココの耳が、布越しに私の胸に当たる。お世辞にも大きいとは言えない私の胸は、さぞ心音の聞きやすいことだろう。心臓がバクバクと動く。きっとこれは私の恋心故に違いない、そう思ったが、その反面で赤音さんの残された想いのようにも感じられた。


「…赤音さんは、生きてるんだな」


『そうだね』


「…赤音さんが、Aを生かし続けてくれているんだな」


『…っ、そうだね』


心臓移植をしたら性格や好みが変わった、なんて事例が報告されているらしい。もしそれが本当ならば、元の身体は“生きていない”としても、心臓は確かに“生きている”のだろう。かつての想いを受け継いで、次の身体を生かし続けているそんな心臓の姿を思い描いた。


『(…ああ、やだなぁ)』


ココと話すだけで、こんなにも幸せなのに。

ココが愛していたのは私じゃない。

いつしか夜が明けて、また新しい日が始まる。ココは薄墨を広げたような曇り空の広がる、そんな明け方に去って行った。


『(…「また会いに来てもいいか」、か。)』


それは、ココが別れ際に口にした言葉だった。私だって会いたい。恋を成就させたいとは想わないけれど、元気でいて欲しいと願うことくらいはしてもいいだろう?けれど、それでは駄目なのだ。今はそれで満足できても、時が経てばきっと“もっと”を望むようになってしまうから。机の上に置いていた、学校からのプリントに目をやる。


『ごめん、ココ』


私は、あなたの側に居たら、きっともう耐えられない。願わくば、自覚しなければ良かった、と未来で笑えますように。



ーーイギリスへの留学生募集のお知らせ



それから私がイギリスへたったのは一月ほど後の事だった。

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(プロフ) - 胸がキューって苦しくなりました‼︎続編楽しみにしてます!! (2022年3月14日 21時) (レス) @page14 id: 3e56271e58 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 最っっ高でした!!どうか続編をどうか続編をお願いしますッ!! (2022年1月13日 15時) (レス) @page14 id: cc47927cf9 (このIDを非表示/違反報告)
白揚羽(プロフ) - ぴよさん» コメントありがとうございます!!!ただいま執筆中ですので是非…🥰🥰 (2021年12月25日 19時) (レス) id: 54b5eea483 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - 続編めちゃくちゃみたいですー!!!!ぜひよろしくお願いします٩( 'ω' )و (2021年12月23日 3時) (レス) @page14 id: 5a0c9ff92a (このIDを非表示/違反報告)
白揚羽(プロフ) - 白さん» コメントありがとうございます…!!!そう言って貰えると本当に嬉しいです…。続編の方も少しずつ進めていけたらと思っています!!ありがとうございました。 (2021年12月21日 20時) (レス) id: 54b5eea483 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白揚羽 | 作成日時:2021年12月20日 21時

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