【宮侑】後輩に弱みを握られた【北信介】

episode27 ページ27

宮 治 side










最後に部室に帰ってきたのが北さんやった。











いつも通り丁寧に扉を閉めて、無駄のない動きで着替えを済ませる。









ほんで、部活中終始ご機嫌やったツムは部室でもそれは継続中みたいで、鼻歌なんか歌って、制服の袖に腕を通しながら言うた。










「北さん、Aさんのこと家まで送って帰りますよね？今下で待ってるて考えると健気やなあ」












まあ普通に考えて、北さんとAさんは仲良さそうやし、学年を超えてあの美男美女は付き合うてるっていう噂もある。









ツムもそれが当然やと思うてたんやろ。































「……いや、送って帰る予定は無い」



















途端にツムのご機嫌の感情の糸が、ぷっつり切れたようやった。




















「1人で、帰らせたんですか？」









北さんは、返事をしなかった。









　


ツムは怒ったような呆れたような顔で、



荷物を適当にカバンに詰め込むと部室から走って外に出て行った。













え、置いてかれる。







角名も銀も急なことに焦って、ツムと同じように適当に荷物を詰めると、すぐに部室から出て追いかけて行った。








マイペースな俺は出遅れて、バタバタしながら部室から出ようとした時




















「……俺が送っても、迷惑かもしれへんやろ」























そう呟く北さんの声が、閉まる寸前の扉の向こうから聞こえた。



























遅れて追いかけて行くと、ツムはさっきと打って変わって不機嫌になっとった。







辺りを見回しながら早足で進んでいくのを見ると、Aさんのことを探しよるんやなってわかった。


















ちょっと前から家でAさんのことが話題に上がるようになった。









"おもろい女の先輩見つけてん"











飯食いながらAさんについて話すツムは、女嫌いの癖に楽しそうやった。

















ほんで今、








商店街の駄菓子屋の前でAさんの後ろ姿見つけた今も、なんや嬉しそうで。










小走りでAさんに向かって行って話しかけとるん見ると、








こいつ、もしかして………って思わされる。
















角名も銀も、そんで俺も



初めてツムがあんなに楽しそうに女子に話しかけてるのを見て、少し戸惑ってた。

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