【宮侑】後輩に弱みを握られた【北信介】

episode43 ページ43

梅雨明けのジメジメとした高い湿度と気温の中、体育祭の午後の部が幕を開けた。







そんな中、不機嫌に唸っているのは誰であろう


私である。








『借り物競争嫌だぁーーーー！！』



「A補欠なんやから仕方ないやろ」






午前の部で体調を崩した子が早退し、代わりに補欠の私が出場することになったのは


稲荷崎名物"借り物競争"









借り物競争とは


走者はメモ用紙に記載された"お題の品物"を友人や観客から借り、それを持ってゴールを目指す。体育祭の定番競技である。




人脈の広さが試されるため、帰宅部の私には厳しいものがある。










そこそこ運動神経が良いために補欠に入ってしまった自分を恨むしかない。








「「まあ頑張りなさい」」




といった感じで、友達に適当に送り出され現在に至る訳だが…














お題：〇〇〇〇〇を持ってきなさい





お題を片手にため息。








どうゆうこと？5文字のもの？





フラミンゴ？





あとは……















やばい。


こんな時に限ってフラミンゴしか出てこないんですけど。
















「Aがんばれーー！！」


「負けたら許さーーん！！」









クラスメイトから応援(野次)が飛んでくる。



とりあえず探すしかないか…














『誰かフラミンゴ持ってませんかー』



「何言うてんねんAさん」







トラックの内側で呆れた顔で私を見ていたのは治くんだった。










ん？



宮治



みやおさむ





5文字じゃんこの子。









『フラミンゴの代わりは治くんしかいない』



「せやから何の話やねん。ちなみに俺、体育委員やからここから動けへんよ。」








お題見してみ、と言われるがままにメモ用紙を渡す。











「5文字か、なるほど。せやったらツムでええやん」







ツム



つむ



みやあつむ…？









『えっ、ちょっと待って心の準備が…』



「ほれほれ、早うせな負けるで」













治くんが指さした方向には侑くん。




久しぶりに、目が合った。












「ツムーー！！！今すぐこっち来いやぁ！！！！」






治くんが(何故か喧嘩腰に)侑くんを呼んでくれたおかげで、渋々ながらこちらに向かってくる問題の後輩。














「最近ツムの機嫌悪いから直したってや」






そう言ってメモ用紙を私の手に返した所で










「……お題何なん」






侑くんの到着。

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