【YouTuber】恋の読み方【短編集】

A.＿Peketan ページ29

「今日は星が綺麗だね」

なんて、柄にもないことを言ってしまうのは、きっと隣にいる君のせい。
君はふにゃりと笑って「そうだねぇ〜」って。
それ、本当に思ってる？
呑気な君の返事に、つい笑ってしまう。
私は君に、めっぽう弱いみたい。

昔から密かに想いを寄せていた君が私の隣を歩いているなんて、現実味のない出来事が現在進行形で進んでいるかと思うと、全校生徒の前でするスピーチよりも緊張する。
真冬にも関わらず、手のひらに汗が滲む。

どうしてこんなことになったのかって？
そんなの私にだって分からない。
定期的に行われる中学の同級生たちとの飲み会。
その終盤で、誰かが言った一言がことの発端。
それから、彼が私を送るとか、そういう雰囲気になって、今に至る。


白い吐息が、夜空に映える。

「…ねぇ？」

沈黙を破った彼の言葉に、心臓が飛び跳ねる。

「なに？」

なるべく緊張を表に出さないように、と平然を装ってはみたものの、不自然感は否めない。


「Aちゃん、好きな人とかいるの？」
「え、」

想像もしていなかった彼からの質問に、動揺を隠しきれない自分がいる。
逆に、好意を寄せている相手からこんな質問をされてポーカーフェイスを貫ける人がいるのなら讃えたい。

「…いるよ」

緊張で、空気が震える。
唇から漏れる白い息。
小さく呟いて、マフラーに顔を埋めた。



「…そっかぁ」



(それだけ…？)

”誰？”って聞いてよ。
そしたら今すぐに”君だよ”って答えるのに。


ねえ……。



隣を見れば、いつもの君だ。

君は私の気持ちに気づいてる？
賢い君のことだから、もしかしたらもうとっくに気づいてるのかもしれない。

もしそうなら、ハッキリ言ってよ。

そうじゃないと、馬鹿な私は期待してしまうから。

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