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空気抵抗《トミー》 ページ39

「結婚?」

「そう結婚」


世界が歪んで、私の濡れた髪から水滴が床に落ちた。
肩にかけていたタオルで頭をガシガシと拭く。

(あ、貴方の匂いがする。)

「へぇ、いいねぇ」

先にお風呂に入った彼の髪はもう既に乾いていて、いつにも増して外ハネが酷い。
それを馬鹿にして笑うのも、直してあげるのも、全部私だと思っていた。

相手は長年付き合っていたあの娘?
結婚式は挙げるの?それはいつ?
プロポーズの言葉は何?

聞きたいことは山ほどあるけど、そのどれも、私の口から出ることはなかった。
祝福の言葉も、出なかった。
でも、それでいいの。
私達にはそういう関係が丁度いいから。

自己解決して、彼の隣に腰を下ろす。

ふわり、とシャンプーの匂い。
今、私も彼と同じ匂いがする。
深く優越感に浸っていると、隣の彼が口を開いた。

「お前もビール飲む?」

「うん、飲もうかな」

冷蔵庫から缶を取り出す彼をぼんやり見ていた。
机には、既に空けられた缶が一つ。

「ん」

「ありがと」

彼から受け取ると、手のひらにひんやりとした感覚が広がる。
結露した水滴が、手首を伝って彼から借りた服にシミを作る。

「ねぇ、何か言う事あるんじゃないの?」

「何を?」

本当は分かってるくせに。

液晶画面に向けられた視線を奪ってやろうと、そっと彼に口付けをした。
その後、彼も優しく私にキスをした。

「私、呼吸するよりも楽に貴方を愛したかった」

「意味わかんね」

苦笑する彼に、"そうだね"と返して私も笑った。
結局彼は、最後まで私に別れを告げることはなかった。
何故かは、聞かないことにしよう。

彼の隣で眠りにつく前、ずっとこの時が続きますように、と願ってみたけれど、それも虚しくいつのまにか朝は来ていた。

家を出る前、
彼と最後に交わしたキスは、やけに冷たかったことを、今でも忘れられない。

秘密ごと《田中》如月梦さんリク→←手取り足取り《田中》あずささんリク



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クロハ(プロフ) - ありがとうございます…最高です… (8月7日 14時) (レス) id: 6a4238f2b9 (このIDを非表示/違反報告)
ゴリラ - ありがとうございます(´;ω;`) (8月4日 18時) (レス) id: 874f7f8e04 (このIDを非表示/違反報告)
瀬名(プロフ) - クロハさん» わかりましたー! (8月4日 15時) (レス) id: b502a9e7b5 (このIDを非表示/違反報告)
クロハ(プロフ) - またまた失礼します(*´-`)エイジ君で甘めなのお願いできますか? (8月4日 2時) (レス) id: 6a4238f2b9 (このIDを非表示/違反報告)
瀬名(プロフ) - 翡翠さん» 本当ですか!そういっていただけて嬉しいです。これからも応援よろしくお願いします! (8月1日 20時) (レス) id: 60b5c0e445 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瀬名 郁 | 作成日時:2017年4月7日 21時

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