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ちょうど夕飯にしようとしていたその時、遠慮がちに玄関をノックする音が聞こえた。
「まぁ!こんな時間に誰なんです?とっくに依頼の時間は終わってるって言うのに。」
ボニーの甲高いハスキーボイスは、Aの小さな家に充分に広がった。
『それじゃあ尋ねてくる友達もいないみたいじゃない。』
Aが、少しむくれているのを横目にボニーは、玄関外の様子を大きなゴーグルのようなもので確認した。
「何だか、怪しい方ですね。深く帽子を被っていて顔が見えません。何故この家の存在がわかったのでしょう。」
『それはもちろん。私がカードを渡した人物なのよ。渡してない人には、ここは、家と家の隙間でしかないもの。』
彼女の家は、カードを手にした人にしか見えず普通の人にとっては、家と家に僅かな隙間があるだけの空間なのだ。
暫く様子を見ているとまた控えめにノックをするのでAが、ゴーグルを覗き込んだ。
するとそこには、彼女にとって思いがけない人物の姿があった。
顔は見えないが、相変わらず猫背なところや不健康そうな白い肌に見覚えがあった。
彼女が、勢いよくドアを開けると青年は、驚いたように目を見開き顔を上げた。
「Aさん。…その、急にすみません。でも貴方に会いたくて…。」
Aは、驚きながらも、今の状況をゆっくり飲み込むようにクリーデンスを優しく抱き締めた。
『無事でよかった。』
クリーデンスの冷え切った体が、みるみるうちに暖かくなっていくのを感じた。
しばらく固まっているとボニーが声をかけてきた。
「まぁなんと!お知り合いでしたか。ささ、早く中へ、外は冷えてますから。」
ボニーは、Aに珍しく
Aは、いきなり抱き着いて不躾だったかと思い愛想笑いしながら部屋の中へ案内した。
『それにしても何故私のこと覚えてるの?あの時オブリビエイトしたはず…。』
「このカードを見て全て思い出したんです。それにあの時…僕にコートをかけてくれた時に何となく。」
『そうだったの。本当にごめんなさい。勝手に記憶を消したりなんかして。』
Aの言葉にクリーデンスは、そんなことないと首を振った。
「僕を守ろうとしてくれたんですよね?…だから大丈夫です。むしろ僕の方が守られてばっかりで…迷惑かけてしまった。」
『迷惑だなんて思ったことないわ。勝手に私がしたことなんだから。』
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狭山(プロフ) - ボンクラMONKEYさん» コメントありがとうございます!とっても嬉しいです。何とか最後まで更新頑張ります! (2023年2月8日 19時) (レス) id: 374a4dca68 (このIDを非表示/違反報告)
ボンクラMONKEY(プロフ) - 前作とても面白かったです。今作も とても楽しみです。応援してます。 (2023年1月25日 21時) (レス) @page1 id: 402691cbe4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:狭山 | 作成日時:2022年10月10日 4時