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1926年
突如として降り出した雨は、ニューヨークで記録的な大雨と観測された。
街中では、コンクリートの地を雨が弾く音や沢山の人が地面を蹴る音。
時々、水溜まりを蹴る音をアクセントにオーケストラが開催されているようだった。
その中を黒い小さな靄が、地面を這いながらどこかへ向かっていく。
靄は、ボロボロになったセーレム救世軍の集会所に入り、やがて1人の青年へと姿を変えた。
クリーデンスは、瓦礫の中を書き分けグシャグシャになった書類を両手に怒りと悲しみで歪んだ。
「これは…誰から貰ったんだっけ。」
クリーデンスは、胸ポケットからキラキラと青く光るカードを取り出し、暫く眺めると徐々に文字が浮かび上がってきた。
魔法道具の修理・依頼は、直接研究室まで。
「Aさん…。そうだ、あの時助けてくれた人。全部Aさんだった!」
クリーデンスは、無くしていたピースの穴を埋めるように彼女との記憶を取り戻していった。
居てもたってもいられなくなったクリーデンスは、書類とカードと少しの荷物を抱え歩き出した。
ホグズミード村から少し離れた住宅街。
並ぶ家々の中に一つだけ小さく、今にも崩れてしまいそうな一軒家が、窮屈に経っていた。
『ボニー!マンドレイクの…さすがね。』
屋敷下僕のボニーは、まるでマグルで言う看護師のように的確に素早く彼女の要望に応えていく。
『でも、ちょっと遅かったみたい…。』
その瞬間家の中では鍋がゴトゴト揺れだし、花火が幾つも飛び出してきた。
「またですか、Aさま。」
ボニーは、呆れながら彼女を護るように魔法をかけた。
「いい加減。もう少し広いお部屋を購入されたらいかがです?金銭には困っておられないでしょう。」
『でも、近くにはホグズミード村があるし、パブもある。あそこのお店の店員さん、無愛想だけど料理は、なかなか美味しいのよ。』
Aは、花火の燃えカスと鍋を洗うように魔法をかけながら話を続けた。
『それに最近は、ダンブルドア先生からの依頼も多いから。学校と近い方が便利なはずよ。』
ボニーは、溜息を1つ吐くと夕飯の支度をし始めた。
彼女は、Aがまだ赤ん坊だった頃からギレスピー家に仕えるうちの一匹の屋敷下僕妖精だった。
彼女が家を出る時、ボニーが自由の身になれるよう靴下を渡したのだが、自分の意思で彼女について行くと決めたのだ。
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狭山(プロフ) - ボンクラMONKEYさん» コメントありがとうございます!とっても嬉しいです。何とか最後まで更新頑張ります! (2023年2月8日 19時) (レス) id: 374a4dca68 (このIDを非表示/違反報告)
ボンクラMONKEY(プロフ) - 前作とても面白かったです。今作も とても楽しみです。応援してます。 (2023年1月25日 21時) (レス) @page1 id: 402691cbe4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:狭山 | 作成日時:2022年10月10日 4時