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さて、どうするものかとクララは思う。


いい感じに宥めてくれそうな悟はいないし、前回同様恵は役に立ちそうにない。悠仁はオロオロとするばかりでポンコツだ。


はぁ、と溜息をつく。そして今も現在進行形で泣きながら暴言を吐いている野薔薇の背中にそっと手を回した。


え、と恵と悠仁は想像しないなかった展開に驚く。


「何するのよ!?」


クララは暴れる野薔薇に一切動じずにその首下に手刀を落とした。死なない様に手加減が施され、野薔薇は操り人形の糸が切れたようにパタリと意識を落とす。


そのままクララは野薔薇を横抱きにすると、二人に差し出した。


「ほら、持って帰って」
「いやいやいや、ちょっと僕たちにそれはハードルが高いっていうか、」
「情けないわね」


大袈裟に降参する悠仁を無視して、無理矢理恵に押し付けると、恵は躊躇しながらも野薔薇を受け取った。


「、、、もう一つ、、あの話、どこまで本当ですか?」
「どこまでが真実かという話になる前に、そもそも私は彼が語った私の過去を知らないわ。」
「1000年以上、軟禁されていたと聞きました。」


クララはピクリと眉を動かした。動揺なのか?と恵はじっとクララを観察する。そんな真面目な彼にクララは笑った。


「あら、彼はそんなことを言っていたの。ふふ、まぁ、私が否定をしたところで貴方たちは信じないでしょうから。でもさっき言ったことは本当よ。人間と同じように幼少期の頃の記憶なんてはっきりと覚えてないわ。」



まぁ、でもとクララは静かに微笑んだ。

「真祖は、、いやお父様はね。私のことを愛してくれていたの。だから感情が薄れていく中でも私は幸せだった」



思い出すようなその視線に、三人は息が止まる。その視線と表情は、確かに愛情を受けた証で、彼女の吸血鬼でありながらも残った人間味がどこか現れて気がした。



「ほら、フェリドとなんかと戦ったんだから疲れたでしょう。後処理はいいから帰りなさい」



私ももう帰るわ。そう言ってクララは伊地知の車が待つ方向へ帰ろうと歩みを進める。その足取りは同族を殺したことに対する罪悪感もないなんとも軽い足取りだった。

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Reina(プロフ) - ゆきさん» ありがとうございます!私生活の方が忙しくて中々時間が取れなかったのですが、そう言っていただけるととても嬉しいです。頑張ります! (2021年10月24日 19時) (レス) id: b4ccc6a785 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 更新お久しぶりです!もう更新しないのかなぁと少し不安になってましたがありがとうございます!ほんとにこの小説面白くて大好きです!無理だけはせずにこれからも頑張って下さい! (2021年10月24日 3時) (レス) @page26 id: 9bb0d4787d (このIDを非表示/違反報告)
金糸雀 - いつも楽しく拝見させていただいております。更新を楽しみにしてお待ちしております!頑張ってください! (2021年7月18日 17時) (レス) id: e5f7c718e0 (このIDを非表示/違反報告)
Reina(プロフ) - れんさん» ありがとうございます (2021年5月25日 16時) (レス) id: b4ccc6a785 (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - ご対応頂きありがとうございます!これからも更新楽しみにしております。季節の変わり目ですのでお身体にはご自愛くださいませ。 (2021年5月25日 1時) (レス) id: cf8acd5d9f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Reina | 作成日時:2021年2月11日 2時

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