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「やあ、傑。」
陽気な声が、空間に木霊する。
「久しぶり、そっちは元気にしてた?」
その声の中には、そこらじゅうからかき集めた哀願が。それが若干の震えとなって声帯を通っていた。
「もう、そんなことないって。僕これでも教師だし、最強だし、、え、ひど、ちゃんと真面目に生徒のこと考えてるんだけど?」
むくれたように頬を膨らませる仕草はいつまでも、子供っぽくて。目隠しを外した彼の表情は喜びと、それを塗りつぶすような切なさで張り詰めていた。
「、、五条先生。会議の時間だって伊地知さんが探してましたよ。」
「え、あれ、本当だ。あらら、ちょっと長話ししすぎたかも。助かったよ、恵。」
するりと目隠しを上げてスタスタと去っていく五条に、恵は眉間の皺を刻んだままその背中をじっと見る。
「長話って、」
長い沈黙を経て迷うように出されたその言葉は、恵の困惑をよく表していた。
「あんたさっきまでずっと一人で座ってたでしょう。」
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「はぁー、なんでもうちょっと早く祓わなかったわけ?」
「なんでもっと早く帳を解いてこなかったのかしら?」
お互い不満を漏らす二人に、周りははぁ、といつものことのようにため息をついた。
「クララさぁ、わざとあの雑草泳がしたでしょ?」
「だから?」
「だから?じゃねえよ。ちゃんと仕事しろよ。」
「あら、その口調も素敵ね。」
苛立ち始めた悟を私は揶揄うように褒める。白い首筋に悟が青筋を立てると、傍観していた周りは室温が急激に下がるのを肌で感じた。
「クララ?ちょっといい加減しなよ。最近おふざけが過ぎる。真面目にしろ。」
「あはは、真面目に?それは無理よ。それぐらい貴方はわかってるでしょう?」
は、と自嘲の籠った渇いた声が呼吸と同時に吐き出される。
「貴方が何で怒っているのかはよくわからないけど、八つ当たりも程々にね。」
宥めるように私は悟の頭を撫でる。それも、普段ふざけている彼がただ戦闘中に手を抜いただけでこんなに機嫌を損ねることなんてないのだから。
ただ、発火するための燃料剤として怒りをぶつけているのだろう。
このまま宥めてもいいが、それをすると私では煽るようになってしまうだけなので、ここにいる人間たちに任せようと気怠げな足取りで扉に向かう。
「あは、剣よ血を吸いなさい。」
後ろから聞こえる私以外が言うはずのない言葉に、私は弾かれるように振り返って剣を抜いた。
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Reina(プロフ) - ゆきさん» ありがとうございます!私生活の方が忙しくて中々時間が取れなかったのですが、そう言っていただけるととても嬉しいです。頑張ります! (2021年10月24日 19時) (レス) id: b4ccc6a785 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 更新お久しぶりです!もう更新しないのかなぁと少し不安になってましたがありがとうございます!ほんとにこの小説面白くて大好きです!無理だけはせずにこれからも頑張って下さい! (2021年10月24日 3時) (レス) @page26 id: 9bb0d4787d (このIDを非表示/違反報告)
金糸雀 - いつも楽しく拝見させていただいております。更新を楽しみにしてお待ちしております!頑張ってください! (2021年7月18日 17時) (レス) id: e5f7c718e0 (このIDを非表示/違反報告)
Reina(プロフ) - れんさん» ありがとうございます (2021年5月25日 16時) (レス) id: b4ccc6a785 (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - ご対応頂きありがとうございます!これからも更新楽しみにしております。季節の変わり目ですのでお身体にはご自愛くださいませ。 (2021年5月25日 1時) (レス) id: cf8acd5d9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Reina | 作成日時:2021年2月11日 2時