検索窓
今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:40,173 hit

第6節 ページ27

〈下校の時間になりました。部活動で残っている皆さんは、速やかに下校しましょう〉

放送部の放送と共に、校門を出る。

 「藤野、一緒に帰るか?」

浩介に会った。

「いいよ。分かった」

何度も、浩介と一緒に帰ったことがある。

 大抵、放課後に浩介と一緒に帰ると、次の日、目撃した奴に、囃されたり彼女かと疑われたりする。

 でも、私は絶対にそんなことはされない。……多分、私が浩介とあまりに釣り合わないから。


 浩介と釣り合うのは、志穂。

 志穂は、外見はほとんど気を使ってないし、今はあんまり成績優秀じゃないし、運動神経もそこそこ。……でも、それは猫のせい。

 志穂は、猫アレルギーだ。

 中三の、受験が終わった直後、ちょっと遅れた誕生日プレゼントで、志穂は、念願の猫を飼った。

 猫アレルギーだと分かったのは飼った直後で、その時は、家族全員で引き取ってくれる人がいないか、聞いて回っていたらしい。

 私も引き取りたかったけど、生憎、私が住んでいるのはペット禁止のマンションだった。

 結局、引き取り手は見つからず、志穂は薬とマスクと花粉眼鏡で家を過ごし、体を誤魔化しながらやってきた。

 でも、薬の眠気や、マスクや花粉眼鏡の不快感は学業にも影響を及ぼした。

 それが、学力低下の原因。運動神経も同じ。そのせいで、勉強ばっかりするようになって、外見を気遣うのもやめてしまった。

 高校に上がった頃、志穂は、教室の片隅にしか存在しなくなっていた。

 自信を失った志穂は、性格が暗くなって、友達も私だけ。

 今や勉強さえ諦めてしまった志穂には、もう、何も残っていないんだ。


 私は、志穂に自信を取り戻してほしい。

 だから、浩介が早く志穂に想いを伝えて、せめてそれで自信を持ってくれれば。

 でも、それじゃあ、私の初恋は、打ち砕かれてしまう。

 親友に自信を取り戻して欲しいと、家族のように願うのに、自分の初恋は守りたい、自分勝手な人間。

 私って、本当、ワガママだ。


 「おーい、聞いてるか?」

気がつけば、浩介に話し掛けられていた。

 「あっ、ごめん。考え事してた。……なんだっけ」

「考え事なんて、お前らしくもない。いつも直感だけで動いてんじゃん」

「それ、どういう意味?誉めてるようには思えないんだけど」

「はは。ごめんごめん」

第7節→←第5節



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (47 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
58人がお気に入り
設定タグ:名前変換オリジナル , 恋愛 ,   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

マサイ推し - 更新お待ちしてます。 (2020年7月26日 21時) (レス) id: 771a4df003 (このIDを非表示/違反報告)
雪見(プロフ) - とても面白いです!!更新頑張ってください!!! (2018年11月16日 22時) (レス) id: 27975a6d3f (このIDを非表示/違反報告)
水瀬(プロフ) - 面白いです!更新頑張ってください!! (2018年10月21日 16時) (レス) id: db4b643399 (このIDを非表示/違反報告)
黒蜜がけ抹茶わらび餅(プロフ) - まぃりぃさん» ありがとうございます!最近、ちょっと用事が多くてですね……更新が遅れてしまいますが、明日からはちゃんと更新しますよー! (2018年8月10日 6時) (レス) id: 1a91fe4b3b (このIDを非表示/違反報告)
まぃりぃ - とても面白いです!続きが楽しみです。更新頑張ってください♪ (2018年8月9日 23時) (レス) id: 6b8bf83b3b (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:黒蜜がけ抹茶わらび餅 x他1人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年7月16日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。