第6節 ページ27
〈下校の時間になりました。部活動で残っている皆さんは、速やかに下校しましょう〉
放送部の放送と共に、校門を出る。
「藤野、一緒に帰るか?」
浩介に会った。
「いいよ。分かった」
何度も、浩介と一緒に帰ったことがある。
大抵、放課後に浩介と一緒に帰ると、次の日、目撃した奴に、囃されたり彼女かと疑われたりする。
でも、私は絶対にそんなことはされない。……多分、私が浩介とあまりに釣り合わないから。
浩介と釣り合うのは、志穂。
志穂は、外見はほとんど気を使ってないし、今はあんまり成績優秀じゃないし、運動神経もそこそこ。……でも、それは猫のせい。
志穂は、猫アレルギーだ。
中三の、受験が終わった直後、ちょっと遅れた誕生日プレゼントで、志穂は、念願の猫を飼った。
猫アレルギーだと分かったのは飼った直後で、その時は、家族全員で引き取ってくれる人がいないか、聞いて回っていたらしい。
私も引き取りたかったけど、生憎、私が住んでいるのはペット禁止のマンションだった。
結局、引き取り手は見つからず、志穂は薬とマスクと花粉眼鏡で家を過ごし、体を誤魔化しながらやってきた。
でも、薬の眠気や、マスクや花粉眼鏡の不快感は学業にも影響を及ぼした。
それが、学力低下の原因。運動神経も同じ。そのせいで、勉強ばっかりするようになって、外見を気遣うのもやめてしまった。
高校に上がった頃、志穂は、教室の片隅にしか存在しなくなっていた。
自信を失った志穂は、性格が暗くなって、友達も私だけ。
今や勉強さえ諦めてしまった志穂には、もう、何も残っていないんだ。
私は、志穂に自信を取り戻してほしい。
だから、浩介が早く志穂に想いを伝えて、せめてそれで自信を持ってくれれば。
でも、それじゃあ、私の初恋は、打ち砕かれてしまう。
親友に自信を取り戻して欲しいと、家族のように願うのに、自分の初恋は守りたい、自分勝手な人間。
私って、本当、ワガママだ。
「おーい、聞いてるか?」
気がつけば、浩介に話し掛けられていた。
「あっ、ごめん。考え事してた。……なんだっけ」
「考え事なんて、お前らしくもない。いつも直感だけで動いてんじゃん」
「それ、どういう意味?誉めてるようには思えないんだけど」
「はは。ごめんごめん」
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マサイ推し - 更新お待ちしてます。 (2020年7月26日 21時) (レス) id: 771a4df003 (このIDを非表示/違反報告)
雪見(プロフ) - とても面白いです!!更新頑張ってください!!! (2018年11月16日 22時) (レス) id: 27975a6d3f (このIDを非表示/違反報告)
水瀬(プロフ) - 面白いです!更新頑張ってください!! (2018年10月21日 16時) (レス) id: db4b643399 (このIDを非表示/違反報告)
黒蜜がけ抹茶わらび餅(プロフ) - まぃりぃさん» ありがとうございます!最近、ちょっと用事が多くてですね……更新が遅れてしまいますが、明日からはちゃんと更新しますよー! (2018年8月10日 6時) (レス) id: 1a91fe4b3b (このIDを非表示/違反報告)
まぃりぃ - とても面白いです!続きが楽しみです。更新頑張ってください♪ (2018年8月9日 23時) (レス) id: 6b8bf83b3b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒蜜がけ抹茶わらび餅 x他1人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2018年7月16日 12時