1〈魔女雨の誕生〉 ページ8
はい、読書も程々にね。と言って渡された朝食を受け取り、テーブルに腰掛けた。
「………」黙々と食べ始める。
今日は何もないだろうか。いや、何事もなく終わるなんてことはありえない。彼女たちは、すっかりあれが快楽となっているのだから。
そんなことよりも。
「…Ahah…!」
次あのヒトに会えるのはいつだろうか。それについて考える方が余っ程楽しい。
嗚呼、楽しみすぎて、笑いが堪えられそうにない。
***
「Ah!!」
深夜、多分二時、女子トイレ。今日も今日とて殴られ蹴られ、暴力を浴びせられていた。
「You're so dirty〜」
そんな罵声も受けながら、横たわっている私の体に、足が思いっきり乗っかる。
「…!!」
声も出さない。Bellaたちは私が声を上げれば上げるほど喜ぶのだ。
心底面倒、だが良い部分も残っている。だから完全に使えなくなるまでは我慢してやるつもりだ。
「…Pitiable」
今度は私の金髪を思いっきり持ち上げ、壁に打ち付けた。とても痛い。痛い。
そんな時だった。
「……!」
私は目を見開き、息を呑んだ。窓から微かに見える、黒い影。
「Ah……」
どうしてそんなに美しいのだろう。今、カメラちゃんを連れて、私たちのことを撮ってくださっている。
その眼中に、私がいる。それだけで、何もかもが満たされていく。
「……What's up?」
不審に思ったであろうBella。だがそんなのどうでもいい。
今この瞬間、この一秒を、身体に刻み込まなければいけない。そして、最高の映像を、彼に提供しなければいけない。
そう思った私は。
「No………」
力一杯、嗄れた声でBellaに訴え、涙を流した。
嬉し涙であった。
次の日も、また次の日も、ブラックは私を撮ってくれた。いや主に撮っていたのはBellaたちだったのかもしれないが、その眼中に、レンズ越しに私が見えているのだと思うと、何もかもが楽になった。
そうだ。幸せだったんだ、彼に見てもらえたのが。
だから、今日まで頑張った。演じてきた。Bellaの前では、できるだけしおらしく、か弱く、脆く振る舞った。全て、ブラックの為に。
今日は、その努力が報われる日。ブラックが院長に成りすまし、皆を一箇所に集めた。勿論、その場にはBellaも、彼女の友達もいた。
「Ladies and gentleman……」そう言って、幕は上がった。
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作者名:U-ray | 作者ホームページ:http://Kegaretakoinitumonakiaiwo0
作成日時:2024年3月25日 23時