ブラックと、とある魔女 (ページ7)

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1〈魔女雨の誕生〉ページ7

その優しい笑顔に、心を絆されるように、私は安心してしまった。嗚呼、まるで空でも飛べるかのように、心が軽くなっていく。

「…Yes」
　ゆっくりと、その手に自分の手を乗せた。彼の手は、生物としての熱を帯びていなかったが、それでも自分の体は、頭から爪先まで、細胞までずっと暖まってしまうのだ。本当、不思議である。

　暫く落ちていく感覚は続いた。果てしなく続く暗闇を見続けていると、このままずっと落ち続けるのだろうか、という思考に陥ってしまう。それくらい、長い時間だった。
　しかし、ついに暗闇は終わりを迎え、私はふわりと着地する。彼の手を離し、徐ろに周りを見回して、ここがどこなのかを確認した。
　白い壁に一枚の鏡、質素な机にベッド、タンス置かれている。ベッド側の壁のカーテンを開け、窓の外を見てみた。
　いつも通りの道路。空気は部屋の中に居ても肌寒いほど冷え、車や人が道を交えている様子が見える。
　帰ってきたのだ。『人間界』に。
「Black,how will you make her quiet？」
「…Well,I hope you're looking forward to that」
　貴方はそのまま私生活を送っていればよろしいですから。そう言って、ブラックは窓を全開し、バサッと音を立てて背から黒い翼を生やして、外へ飛んでいってしまった。
「………」
　そのままの私生活を送ればいい。つまり。
「……“Pretend”」
　フリをすればいい、ということだろうか。
　適当にこれからの展開を想像しながら、私は寝間着を脱いで、私服に着替えた。
　ふと目を移す。壁掛け時計の長針は10、短針は8を指していた。もう十分ほどで九時だが、今日は休日のため問題ない。ゆっくり着替えて、部屋を後にした。

「Oh!」
「Oh,Bella」
　ぶつかりそうになり、咄嗟に距離を取る少女。Bellaだった。
「Oh my gosh. I'm sorry,A？」
「…No problem♪」
　気軽に謝ってくるBellaに対して、私も気軽に笑って許してあげた。彼女の眉がピクリと動く。
「I see. You came back here, A」「……」
　落ちた低い声で、そう呟いたBella。「See you」と言って、そのまま去っていった。彼女の向かう先には、いつもの、友達二人。あの子たちの名前は覚えていない。
　私は階段を下りて、朝食を取りに行った。

「…Good morning」食事当番の人に挨拶する。
「Good morning, A. You didn't wake up early today. What's up？」
「I have read a book a littel until late at night」